くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「フェイク・クライム」「いちご白書」

フェイク・クライム

「フェイク・クライム」
時々、この手の駄作に出会う。まぁ、絨毯爆撃で映画を見ていると仕方ないのであるが、キアヌ・リーブスヴェラ・ファーミガなど俳優さんのファンなら写るだけで良いというレベルで満足すれば良いかと思います。

夜の高速道路の料金所から映画が始まる。料金係はこの映画の主人公ヘンリー(キアヌ・リーブス)。正規の入り口を通らずに走り抜ける車にも全く関心がない。

さて、家に帰るとかわいい妻。子供がほしいと言うが今一つ乗り気でないヘンリー。そこへ突然幼なじみのエディがやってきて、友達が体調が悪く代わりに草野球にでてほしいと車の運転をさせる。ところがエディ等は銀行強盗をし、逃亡用の車の運転手にヘンリーを選んだのだ。訳も分からず逮捕され、半年、一年とたつ。妻も離れていく。

背後に流れる音楽がどこかとぼけているので、軽いタッチの映画だろうと見ていると、出所したヘンリーがたまたま喫茶店で劇場と銀行の間に地下通路が昔あったという古い新聞を見つけて、銀行強盗を思いつく。まぁ、このあたりは良いとしよう。

しかし、その通路の場所が劇場の楽屋で、そのためにヘンリーが「桜の園」の主役ジュリー(ヴェラ・ファーミガ)の相手役になって、いつの間にか舞台にのめり込んで、ジュリーとの仲がどんどん深まって、じゃぁ、銀行強盗はというと、一方で進んでいるという展開。しかも、当初のエディが見るからに姑息な悪党で登場、案の定途中で裏切るのだが、今一つ人物がたってこない。

この中途半端な展開、そして結局、強盗は成功してマックスらはカリフォルニアへ。手引きした黒人のガードマンは結局ラストででてこないし、どうなったのと言う疑問もそっちのけで、ヘンリーとジュリーが抱き合って終わるエンディングはどうなの?という感じである。

ラブストーリーなのか銀行強盗になんかどんでん返しが隠されているのか、マックスが詐欺師だったという設定はどこにも生きてこないし、なにこれという脚本なのだ。

なにを作りたいのか、どれが本筋なのかわからないままに、もうちょっとひねったらコーエン兄弟の作品みたいな小粋な一本になりそうなのにまるで消化不良の状態で終わってしまうのだからどうしようもなかった。

「いちご白書」
30年前に大学の映研が上映したのを見たきりで、DVDがないのでテレビで放映したのを見て、レーザーディスクで見た程度のまま、それでも大好きな映画の一本。とうとうデジタルマスターされたので勇んで見に行きました。

やはりよかった。確かに私が学生時代を過ごしたのと一世代前の物語なのであるが、まだまだ学生運動がささやかながら残っている頃に大学生活だったのでこの作品の息吹は多少なりとも理解できる。

それより、見直してみて、その映像演出のおもしろさには目を見張る。

MGMのロゴの後、ボートをこぐ青年たちの姿、シャワールームで学生たちがシャワーを浴び、ゆっくりとタイトルがあがってきてパフィ・セント=メリーの「サークルゲーム」がかぶってくる。本当に昔の映画のメインタイトルはいつも粋ですね。

そして本編にはいるけれども、ドキュメンタリータッチのカメラワークと映像と音がオーバーラップしながら繰り返されるスチュワート・ハグマンの演出はなかなか見せてくれます。それに、時にフラッシュバックやあちこちに場面が変わる細かい編集がどんどんストーリーを語りながらいつの間にか主人公サイモンとリンダの甘酸っぱいラブストーリーがにじみ出てくる展開は何とも切ない。

クライマックスはご存じ、講堂に集まった学生が警官隊に催涙ガスのようなもので襲われ、必死で逃げまどう学生たちを殴る蹴るの勢いで警官たちが捕まえていく。だきあっていたサイモンとリンダは別々に引き裂かれ、サイモンが警官をふりほどいてリンダのところへ飛びかかるストップモーションで再びサークルゲームが流れエンディング。暗転して、向こうから「いちご白書」のタイトルが迫ってきてエンドロールになる。

実話を元にしているとはいえ、クライマックス、全景で真上からとらえた講堂の床に円を描く学生たちが、警察の乱入で散り散りになり、カメラがあちこちで引っ張られる学生をニュース映像のようにとらえる。そして、すこしづつサイモンとリンダのところへ寄ってきて、引き裂かれていく姿がクローズアップになって結ばれていく迫力はこれぞ映画である。

今回デジタルマスターリングされ、字幕も入れ直されたためか、ラストシーンで「リンダ!」「サイモン!」と叫び会う声が字幕になっていなかった。叫んでいるだけで何となくわかるものの、やはりここは一つのラストシーンの見せ場なのだからちゃんと字幕を挿入してほしい。

いずれにせよ、一つの時代を駆け抜けたような映像が一気にファーストシーンからラストシーンへ走り抜ける。やや、時代背景の知識がいる作品であるが、映画作品としては評価してしかるべき、そして後生に残すべき秀作であると改めて実感しました。よかったです。