くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「瞳は静かに」「ニューイヤーズ・イブ」

瞳は静かに

「瞳は静かに」
アルゼンチン映画である。第三国の映画というのはその歴史的背景の知識があまりないので最初はとまどってしまう。この映画もしかり、時はアルゼンチン軍事政権の時代で、町には反体制派を駆逐するべき秘密の組織などが点在していた時代である。というチラシの知識をもとにこの作品を見る。たぶん、それがわからないと意味不明だったかもしれません。

子供が書いたカラフルな人の絵をタイトルバックに描きながら登場人物が軽やかに紹介され、主人公アンドレスが無邪気に遊んでいる画面で映画がはじまる。彼はそのまま祖母オルガのいる家に。どうやら両親は別居しているらしく、母ノラの家に戻ると母はアルフレドという男性となにやら秘密めいた話をしている。恋愛沙汰の話ではなく、どこか政治じみた話のようである。そして、なにやら包みを預かる母。

しかし、アンドレスにとっては優しい母で、仲のいい兄アルマンドとの暮らしは平和なようだが、ある日母は勤め先の病院で婦長に言われて届けた病室で瀕死の女性を目撃、うろたえた彼女はあわてて道にでて公衆電話をしようとするがつながらず、ぼんやりしたところで車にはねられ死んでしまう。

そしてアンドレスとアルマンドは祖母オルガの家で父と暮らすことになる。こうして物語の本編へ入っていくが、どこか不穏な行動をする大人たちの姿が何気なく描かれ、いかにも善人に見えるオルガの姿によけいに混乱してくる。それに、父は母が持っていた包みを見て驚きあわてて処分する始末。さらに母の服さえも燃やしてしまう。何がどうなのかわからないままにアルマンドは毎日を暮らすが、時々親しげに近づいてくる男や、父やオルガがなにやら話をするのに耳を傾けている。

オルガが自分のことを「レディ・オルガ」と呼び、周辺の情報が集まってくるというせりふなどから、この女性がこのあたりでかなりの力のある人物でここがなにかの拠点であるようだ。ある日アンドレスは窓から見た景色は拉致されていく人の姿。平和な毎日のはずなのに、いったい何が起こっているのかと思わせるワンショットである。

イラスト調のロゴで、秋、冬、春、夏と語られていく中で無邪気に遊ぶ反面、次第に父やオルガにたいする不信を募らせるアンドレス。やがて母が死んで一年がたち、新年が近づいたとき、アンドレスはオルガの前でビー玉を振っていらつかせる。次第にストレスが高まるオルガは急に胸を押さえる。それでもやめないアンドレスのアップ、クローズアップとカメラが接近、苦しむオルガを前に平然とみつめるアンドレス。やがてオルガはその場で息絶える。

そんなオルガを残してアンドレスは外へでて遊んでいると男が近づいてくる。「オルガはどうした?」「家にいるんじゃないの?」と答えたアンドレスのおもちゃのパズルが見事に三角形を作ってエンディング。

きれいなデジタル映像で淡々とアンドレスのさりげなく耳を澄まし、心がかたくなになっていく様子が描かれるある意味不思議な映画である。アルゼンチンという国柄を理解した上でないとこの映画の冷たさ、怖さは理解しづらく、その意味でこの映画はちょっとストーリー構成が未完成といえるのかもしれません。ストレートに理解しづらいのはやはり自国の人でないとこの緊迫感を思い出さないためでしょう。

しかし、どこか映像としてストーリーテリングの面白さとしての個性ある作品であり、必見の一本だった気がします。

「ニューイヤーズ・イブ」
全く、この手の映画を撮らせるとアメリカの右にでる国はないなといつも思ってしまう。

軽快でのりのいい音楽、とっても洒落た気の利いた会話の応酬、そしておとぎ話の夢のようなエピソードの数々、そんなてんこ盛りのようなハッピーな世界をさりげなく、しかもトップスターを惜しげもなく集めて作ってしまう。

これが映画王国アメリカの醍醐味ですね。とっても幸せでハッピーになって劇場をでることができました。といっても、映画の舞台は2011年の年末、すでに年が明けてややずれてから見に行ったのですが、見逃さなくてよかったです。

ハル・ベリーアビゲイル・ブレスリンのご贔屓でもある私は彼女たちがみれればそれでよかったのですが、大好きな「プリティ・ウーマン」の監督ゲイリー・マーシャル(いまだに「プリティ・ウーマン」の監督というのがすごい)なので、それなりに楽しめると思ったのです。そして、期待通りとっても楽しいひとときを過ごすことができました。これこそザッツ・エンターテインメントです!

ニューヨークで年末に催されるカウントダウンイベントに向けて、さまざまな人たちのラブストーリーがオーバーラップして描かれていく。一見、バラバラな人物たちがそれとなく絡んできて、ファンタジックな展開で次々とハッピーエンドを迎える。これって、忘れていた映画の本当の楽しみ方なんじゃないだろうかなんて納得したりする。

時計台ですれ違ってそれぞれの目的に行く男女、車が壊れて困っている男にニューヨークへ向かう車を手配してやり、そのキャンピングカーの中で暖かいファミリードラマが語られる。止まったエレベーターの中で芽生えるべく芽生える恋い、でもその前の飾り付けにこだわる男の設定が実に凝っている。病院で死を迎えるが最後にボールドロップのイベントを思い出にしたい男の前に現れる娘。1年後の再会を約束していた二人が予想の通りに再会してハッピーエンドで迎えるラスト、やっと大人になりかけたのにいつまでも子離れしない母親、それぞれがそれぞれに実に巧妙に絡んでくる脚本の見事さはこれぞ夢の国ハリウッドの真骨頂。

最後の最後、エンドタイトルまで席を立たずに、ひとときの幸せな時間をかみしめることができました。
これが映画!これがエンターテインメントです!