「人間の運命」
これは良かった。カメラアングルが抜群に素晴らしいし、ストーリーの展開、構成もテンポよく見せてくれる。しかもソ連映画らしい壮大なシーンもあちこちに見られるし、文句なしのモスクワ映画祭グランプリ作品でした。監督はセルゲイ・ボンダリチュク。デビュー作です。
一人の少年を連れた男が道をやってくる。彼の名前はアンドレイ、湖のそばで出会った老人にこれまでの物語を語りはじめて映画が始まる。アンドレイの人生は途中までは順風満帆だった。大工をしていて、やがて一人の女性イリーナと出会い結婚、子供も産まれ幸せなはずだった。長男が数学で賞を取ったと浮かれている時戦争が勃発、アンドレイはドイツとの戦いへ出て行く。
そこで、車を運転中にドイツ軍の空爆に遭い、ドイツ軍の捕虜となる。死を目の前にしながらの日々の中、やがて独ソの立場が変わってくるのに伴い、彼はドイツ少佐付きの運転手となる。アンドレイは、少佐を巧みに拉致しその車のまま戦場を逃亡、少佐を捕虜にしてソ連軍に戻ってくる。
アンドレイはその時の褒賞で一ヶ月の休暇をもらう。そして故郷へ戻ってくるが、妻と娘は爆撃で死に、長男は志願兵となってそのまま行方がわからなかった。アンドレイは再び戦線に戻るが、まもなくして長男が大尉として赴任している知らせを受ける。程なくして戦争は終結、勝利に浮かれる中、長男の戦死の知らせが届く。意気消沈したアンドレイが、故郷へ戻らず仕事をして暮らすが、1人の戦争孤児ワーニャと知り合う。ワーニャの父は戦争へ行ったきりで、母は列車の爆破で死んだという。そんなワーニャにアンドレイは自分が父親だと言い、よろこぶワーニャと生活を始める。
映画はここで冒頭に戻り、苦難の人生を前向きに生きるアンドレイの姿を捉えて終わる。斜めに捉えるカメラアングルや、彼方に見える収容所の煙突の不気味さ、爆撃機が群れをなしてくるカットなど、シーンシーンがみごとというほどスケールが大きく、スタンダードモノクロと思えない映画の大きさを感じさせる。素晴らしい一本だったと思います。