くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「裸足のピクニック」

裸足のピクニック

ピアフィルムフェスティバルが資金協力し将来有望と目される監督を助成した運動の一環で制作された作品で、矢口史靖監督の長編デビュー作である。すっかり京都歴史博物館にはまってしまって、またまた出かけました。

一般商業映画とは一線を隔している作品なのでややシュールで勢いで走る作品ではありますが、矢口監督の才能の片鱗を伺う上では本当に見所のある一本でした。

けだるい夏の終わりのプールサイド、キセル乗車でお互いに定期を貸し借りしているどうしようもない女子高生のグループの会話から映画が始まる。主人公純子がその日、日頃つきあっている大学生の彼氏の下宿をでて電車に乗っていると車掌にキセル定期がばれてしまう。

駅員室からとっさに逃げた純子はエスカレーターに鞄の中身を巻き散らかし、母や先生を呼び出されてしまう。名乗り出ることもできない淳子はそのままおばあちゃんの家に。ところがおばあちゃんはその日死んでしまって、両親とおばあちゃんの遺骨を引き取りにいく途中事故にあって、自分が一人で遺骨を持って帰ることに。

ところが途中でけつまづいて遺骨をばらまき、そこへ道路の清掃車が通って掃除されてしまう。困った純子は他人の葬式にでて遺骨を盗もうとしたところ妙な女に捕まり・・・

とあれよあれよとあり得ないようなあり得るようなトラブルが次々と純子に降り懸かっていく様が自主映画のような素朴な映像と演出で展開していく。

不幸の連続が彼女を襲っていく様は一見非現実的にも見えるが、考えようによってはあり得る話でもある。そしてそんな運のない彼女が次々と手際よく解決していくわけでも悪、それをそのまま受け入れながら前に前に進んでいくジェットコースターのような展開が素朴ではあるけれどもバイタリティにあふれています。

いったんは離れてしまった暴騰ででてきた妙な女に再び巡り会い、留守の家に入り込んでは生活をする純子。ところが喫茶店のマスターに体を提供するようにその女に仕組まれた純子はそのマスターをホークで刺して逃走。なぜかそのマスターのいる商店街の人たちがみんなぐるだったというクライマックスの展開は完全にブラックなファンタジーである。

自宅に戻った純子は妊娠がわかり、時間がたって、産んだ子供であろう幼稚園児を自転車に乗せて颯爽とこちらに走ってくる純子のショットでエンディングである。

とにかく行きあたりばったりではないかと思えるような脚本の妙味はデビュー作ならではの初々しさと実験精神満載の純粋さがあり、ついていけないという乾燥もみ絵隠れしてしかるべき映画ですが、後に「ウォーター・ボーイズ」や「スウィングガールズ」、最近の「ロボジー」の演出の力量を考えると、とっても楽しめた一本でした。