くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「気狂いピエロの決闘」「俺の笛を聞け」

気狂いピエロの決闘

気狂いピエロの決闘
大映画祭週間の上映プログラムの一本を見に行きました。
非常にグロテスクな感性に彩られた映像展開とファンタジックな様相が入り交じった独創的な作品でした。ちょっとした逸品だった気がします。

映画が始まると細かいカットとテンポでつづるタイトル、そして主人公ハビエルの父で泣き虫ピエロの演技で一世を風靡している演技が披露されるがすぐに空襲のようなサイレンとともに内戦のシーンに展開。パッとジャンプカットで転換する映像ショットが光をファンタジックに使用した非常に独創的な映像でドキッとさせられる。

そしてピエロの姿のままに鉈を振り回して戦うものの一人の軍人に殺される。その軍人の片目をいぬいたハビエルのシーンから時は移りハビエルは青年に。

あるサーカス団に入り、そこで一人の美女と出会うが、その美女の愛人で怒りのピエロ役の男と諍いになり物語は、というより映像はどんどんエスカレートしてホラー映画の様相へと発展していくあたりはちょっとまとまりがかけているかと思えなくもない。

顔をやけどでつぶしたハビエルとハビエルに切り刻まれて化け物になった怒りのピエロセルジオとの確執と戦いが機関銃をぶっ放したり残虐な殺戮を繰り返したりとまさにスプラッターの世界。そこへCGを駆使した縦横無尽な空間映像が展開、二人が取り合っている美女の存在などどこ吹く風になりかけるような展開にドギマギしているうちにクライマックスの十字架の上でのまさにホラー映画のクライマックスのような格闘シーンへつながる。

結局、二人は捕まり美女は死んでしまって、護送車の中でセルジオとハビエルが向き合って苦笑いをしてエンディング。

独特の感性で見せる映像がなかなかの逸品で、その不思議なリズム感に酔ってしまうのだが、なんとも物語が支離滅裂なくらいに暴走するから、せっかくの三角関係のおもしろさが吹っ飛んでしまったのはちょっともったいないかな。でも見逃せない一本だった気がします。


「俺の笛を聞け」
こちらも三大映画祭上映作品。何とも内にこもった沈んだ映画だった。淡々と主人公の心の葛藤をとらえている映像は正直いらいらするのだが、決して退屈という言葉にならないところは評価されてしかるべきだったかもしれない。

物語は少年院を舞台にあと数日で出所できる少年シルヴィウのお話である。

ある日、弟が面会にきて母親が現れて自分をイタリアに連れていくのだという。今まで自分の男喚起のために翻弄され、今の境遇になったきっかけにもなった母親の出現に、ここまで平静に過ごしてきたシルヴィウの心に葛藤が生まれる。その様子を常に上目遣いに人を見るシルヴィウの姿を淡々ととらえていくのである。

自分の出所前に弟が連れ去られることに気が気でないシルヴィウはとうとうカウンセリングの面接にきた女性を人質に母親へ弟を連れていかないことを誓わせ、さらに密かに恋いこがれたカウンセリングの女性とのいっぱいのコーヒーを要求するのだ。

そして、車に乗って女性と脱出したシルヴィウはコーヒーショップでコーヒーを飲み、一人外にでる。そして警官に捕まってパトカーに乗せられていくショットでエンディング。画面は何事もなかったかのように車が左右から走りすぎていく。

凡作ではないものの、反抗的なシルヴィウの姿にどこか人生に逃げている若者の姿が被さって中盤まではちょっと反感を持ってしまいました。この手の静かな心理ドラマは余り好みではないのでよけいしんどかったというのが感想です。