くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ミステリーズ 運命のリスボン」

ミステリーズ

めくるめく人物関係、中心となる語り手が次々と代わり、それぞれの関係が幻想のように絡み合い、誰が同一人物かさえ定かでなくなる陶酔感。最初でこそ物語を追っていたものの後半にはいるとどうでもよくなってくる。これはいわゆる一瞬の夢なのではないかと思えるのだ。

画面が抜群に美しいし、手前に人物を配置したり調度品をかぶせたりしながら奥行きのある画面を多用する一方で、ゆっくりと流れるようなカメラワークとズームインアウトを繰り返すカットを多用。長々としたワンシーンワンカットでせりふを語らせる。映画が始まってからラストシーンまでが大河が流れるごとくゆっくりと時が進むのだ。

一人の少年ジョアンがデュニス神父のもとで生活している。なぜか彼には名字がない。そのジョアンにデュニス神父が実母アンジェラを引き合わすところから物語が始まる。

なぜ、ジョアンとアンジェラは離れているのか?その謎を語り始める前半部分、そして物語はデュニス神父の本当の姿へとどんどん飛躍していく。いや、飛躍しているのではなく頭に浮かぶジョアンの夢の中の妄想なのかもしれないのだ。

語る主人公が次々と変わるだけでなく、語り始めた人物とは別の人物の話が展開していくなど、悪くいえば支離滅裂な構成でどんどんストーリーが展開していく。その中で、ジョアンは青年となりフランス留学をする。

しかし、なぜか謎の金が彼に届けられ、彼は人々から離れるようにあるホテルへ。そこで、疲れはてたように眠ったシーンで一転、女中が彼を発見すると死んでいる。デュニス神父たちも駆けつける。ひとときの夢だったという落ち?それはあまりにも陳腐、それを4時間半で語るのはあまりといえばあまりの無謀であり、監督の独りよがりではあるまいか。

しかし、完成された映像づくりとカメラワークにうっとりと引き込まれることは確かであり、最後の解釈が様々になるかもしれないものの、映像作品としてものすごいものを見せられた感は否めない。ただ、しんどい。