くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「サラゴサの写本」

サラゴサの写本

めくるめく迷宮、結局物語の本筋はどこにあるの?物語の主人公は誰?そんなこんなで混乱に混乱を続けているうちに映画は終わってしまった。まさに夢を視覚化した迷路のようなストーリー展開に途中から理解するのを、いや組み立てていくのをやめてしまうような映画でした。

映画が始まるとベートーベンの第九にあわせたような映像が広がり始める。なにやらコスチュームをきた主人公らしい人物。そして、一冊の本を見つけ、中を開くと美しい絵が描かれている。その絵を彼に迫ってきた男と二人で見はじめて物語は17世紀のスペインへ。

ところがそこで展開する物語の中で語られる登場人物のエピソードが次々と別の物語となって映像になる。さらにそのエピソードの中の物語がまた映像になる。入れ子のように組み立てられ、時に一つ手前に戻るものの、そこにトリック撮影を駆使したようなショットも挿入。まさに夢の中の何でもありの映像が展開するのだ。最初は整理しながら人物の名前を追いかけていたが、途中からあきらめた。

そして、一つ手前、一つ手前、と戻ったかと思うとまた元に戻る。冒頭の本がキー映像なのだろうと終盤、それを投げつけるシーンなども登場し、さらには主人公らしい男が裁くの中へ歩いていく。??で、映画のはじめのシーンまで時間が、空間が戻るのかと思うとそれもなくてエンディング。え=====!

展開するエピソードはコミカルな恋愛ドラマであると思うし、どこかシェークスピアの喜劇のごとき色合いで展開するしゃれたストーリーだと思う。でも、それが奇妙に絡み合っているようでただのエピソードなのだ。一本の物語を求めてはいけない作品なのだろう。夢の中の何本立てかのストーリーの入り子物語でした。ただ、全編、カメラアングルは実にしっかりしている。構図にもこだわり、美術セットにもきっちりとした配置がなされている。闇雲の作られた映画ではないことは明らかで、カルト映画かもしれないがある意味一級品なのかもしれない。