くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ウルフ・オブ・ウォールストリート」

ウルフ・オブ・ウォールストリート

大好きだったマーティン・スコセッシはどこへ行ったのだろうか。あの、美しい映像派の監督の作品を今回も目にすることはなかった。

ひたすら乱痴気騒ぎで突っ走る、アメリカン映画の典型で、無駄に長い。たしかに、3時間足らず、退屈することはなかったが、それは、ただ機関銃のように乱射するスラングだらけのせりふの応酬によるものだ。

主人公ジョーダン・ベルフォードにはなんの感情移入もしないし、彼の周りの男たちにも、魅力を感じる人物は一人としていない。

ひたすら金をもうけ、ドラッグを吸い、女を侍らせ、贅沢三昧に生活する。それがアメリカンドリームなのだといえば、いったい、かつての夢の国アメリカはどうなったのだと思ってしまう。そして、そんな夢の国を見せた夢の工場アメリカ映画はどこへ行ったのだろうか。

物語は、証券業界の風雲児としてウォール街に飛び出てきたジョーダン・ベルフォートという男の実話を元にしている。映画は、その成功の絶頂から始まる。会社の中をライオンが歩き回るコマーシャル、壮大な邸宅、うらやむような贅沢さ。そして、彼が、証券業界に入る若き日へと戻って本編が始まるのである。

巧みなセールストークと押しの強さで、みるみる、証券業界で成功し、巨大な家を買い、美しい女性と結婚する。周りの人物は、一癖もふた癖もある、というより、どう考えても信用できないが、金をもうけさせてもらい、金持ちにしてもらったという恩のみでつながっている。

高級スポーツカーを乗り回して、湯水のように金を使う様を、多彩な人物を配置し、細かいカットの繰り返しと、乱れ飛ぶせりふの洪水の中で、いつの間にか、この狂乱の世界に引き吊り込んでいく。

しかし、ふとしたミスから、ほころびがほころびを生み、それでもよみがえることになるのだが、いつの間にか、坂を下っている様子が見えてくる。そして、たどり着く、離婚、収監。

しかし、獄中であっても金の力は強で、悠々自適の生活をし、やがて、セールスのカリスマとして、様々な講演に引っ張られていく。冒頭で、かつての部下がいったボールペンのセールストークを試すショットでエンディング。

確かに、それなりの大作に仕上がっているが、とてももアカデミー賞と思えない一本だと思う。まぁ、個人的な好みもあるだろうが、私は、それほどの作品とは思えなかった。ただ、二人目の妻ナオミを演じたマーゴット・ロビーがとにかくすてきで魅力的だったのは、値打ちものだったかもしれない。