くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「駆込み女と駆出し男」「明烏 あけがらす」「リベンジ・オ

kurawan2015-05-19

「駆け込み女と駆け込み男」
近頃、目にしなかったハイクオリティな日本映画の秀作、こういう映画を作れる人がまだいたのかとうなってしまいました。

監督は原田真人

映画は苔蒸した地面に雨だれが落ちているシーンから始まる。タイトルの出方、冒頭のせりふの掛け合いのリズムは、市川崑の映画を思わせるところがあるが、なかなかのオープニングである。

満島ひかり扮するお吟、商家の主人の妾の彼女が、颯爽と店を切り盛りし、すべてを段取りつけて東慶寺へ向かうシーンから物語が始まる。ここにタタラを踏んでいる製鉄の職人のじょご、女好きの夫にいいように使われている彼女は、死ぬか東慶寺にいくかまよって、東慶寺に向かう。

二人が森で出会い、ともに東慶寺に駆け込んでからが本編となる。一緒に飛び込んだのが医者見習いの信次郎、この三人の物語を中心に、寺の中での出来事が群像劇のように展開するが、せりふの掛け合い、絶妙に挿入される古き日本の言葉など、言葉遊びの数々にまず引き込まれる。

原作が井上ひさしなので、なるほどと納得するが、原作はもっと深い描写されているのではないかという疑問も若干浮かぶのが残念。

丁寧な構図を保ちながらのカメラワークの妙味と、大画面を効果的に利用する画面づくり、さらに美しい日本の景色を取り入れた時の流れの演出など、最近では廃れたのではないかと思えるようなオーソドックスな画面がとにかく美しい。

冒頭の二人がやがて二年を迎えるまでの様々な出来事が語られる展開だが、決して飽きることなく、さりげなく入れられるそのほかのエピソードの配分も絶妙。

ただ、難をいうと、見事なせりふの掛け合いになる導入部分のテンポの間とせりふの切れが、若干良くない。

編集でカバーするか、役者の感でカバーすべきなのだが、ここがやや演出不足に見えるのが本当に残念。それと、一つ一つのエピソードが深い話であるにも関わらず、今一歩掘り下げ切れていない。

「赤ひげ」と同じ劇パターンなのだが、さすがにここには差が見られるというのが、これも残念なところだった。

とはいっても、大きな画面に、小さく配置された人物や、巨大な寺の姿、人々の機微の描き方などはすばらしく、このレベルの作品が見れることだけでも感動する映画だった。見て良かったと思える映画とはこういうのをいうのでしょうか。

クライマックスは、死を間近にしたお吟は家に帰され、じょごは元夫の重蔵に復縁を迫られるが、断り、信次郎と所帯を持つことにする。

ラストは、信次郎がかつてであった、あこがれの曲亭馬禁の家にじょごにつれていってもらい、めでたしめでたしでエンディング。
ストーリーのおもしろさと、クオリティの高さに充実感に浸れる秀作でした。


明烏 あけがらす」
大好きな福田雄一監督作品なので見に行ったが、期待通り、終始楽しませてくれました。

ホストクラブで働くナオキが、通りを駆け抜けている。野球賭博で大儲けをして、今までの借金を返せるようになったので大喜びで店に戻ってくる。

こうして物語は始まるが、大儲けしたお祝いに、大騒ぎして夜が明けると金がない。周りの誰もが知らないといい、期限が迫ってくる。そこに家出少女がやってきて、父もやってきてというシチュエーションコメディ。

明らかに舞台劇であるが、キャッチボールのように繰り返すせりふのやりとりの楽しさ、のりとつっこみのおもしろさに、一瞬も飽きることなく、しょぼいながらもげらげら笑ってしまうからいい。

結局、すべてがお芝居で、借金は完済されていて、ナオキに立ち直ってもらうための演技だったとわかるラストでハッピーエンド。

たわいのない映画ですが、こういう映画を作りたい、こういう舞台を作ってみたいと思える映画だった。やっぱり福田雄一は最高やね。


「リベンジ・オブ・ザ・グリーンドラゴン」
製作総指揮マーティン・スコセッシ、監督アンドリュー・ラウというキャッチコピーだけで見に行った映画。

物語は実話を元にしたもので、中国から違法入国してアメリカに渡った主人公サニーが、いきるためにギャングになり、中国人マフィアの抗争に巻き込まれていくというものである。

船の上から水面を見下ろす水しぶきの映像で映画が幕を開ける。

アメリカに不法入国したサニー少年と友人のスティーヴンだが、ことあるごとにいじめられる。そんな彼を拾ったのが、地元で勢力のあるギャング、グリーン・ドラゴンのリーダーポールだった。

生きていくためにギャングとなり、頭角を現していく二人だが、復讐が復讐を呼ぶ繰り返しの中で、少しずつサニーは疑問を持ち始め、スティーヴンもやるせない中で、毎日をを送る。

そして、ふとした事件のほころびから、スティーヴンは組織に抹殺され、サニーは、ポールの知人の娘ティナと心を曳かれ始める。

そんな中、警察とFBIの捜査の手がせまり、ティナは捕まった兄のために組織を売り、殺されてしまう。

サニーはそんな非情さに辟易として、ポールを殺すべく、香港に戻ったポールの目の前に現れるが、逆にポールの知り合いの中国人刑事に撃ち殺される。

これという秀でたシーンもなく、スローモーションを多用したリアリティはおもしろいが、「インファナル・アフェア」のようなスピーディな切れもない。ふつうのギャング映画だった。