「ツイン・ドラゴン」
全く、見る映画がないので、香港中国映画特集で、懐かしのジャッキー・チェンの1992年の映画を見に行く。まぁ、今更ではないが、即興でその場その場で描いていく適当なストーリー展開は、しつこいほどにだらけてくる。
道入部、双子の赤ん坊が別れ別れになる下りの映像は、さすがに監督がツイ・ハーク、リンゴ・ラムだけあって、なかなか見せてくれるが、本編に入っていくと、もう、ストーリーよりも、その場のおもしろければいいじゃないか、という思いつきの場面だらけで、おもしろいというよりあきれてしまう。
これがジャッキー・チェンの映画である。しかし、初期の彼の作品や、アメリカに行って戻ってからの香港映画などに、特筆する物もないわけではないから、やはり一流のエンターテイナーなのだろうと思う。
物語は、赤ん坊の頃に別れた兄弟が、28年後に、一人は有名なピアニストに、もう一人はチンピラまがいの男になっていて、香港で再会し、どたばた劇が展開するという物で、なんの取り上げるほどのシーンはない。正直、居眠りしても話が分かるという適当さの映画でした。
でも、息の長いジャッキー映画の魅力を伝えてくれる映画でした。いい時間つぶしです。
「サイレント・ウォー」
香港映画は、今まで培ってきた映画技術ゆえか、シリアスなドラマを作ると、時として、恐ろしいほどの完成度の高い物を生み出す。それは「インファナル・アフェア」しかりである。
そして、今回の作品もまさにそんな作品でした。
監督がアラン・、アック、フェリックス・チョンという現代香港映画の売れっ子監督である。
時は1949年、中国共産党と国民党がまだ争っていた時代である。共産党は敵の動向を監視するために701部隊と呼ばれる情報収集特別班を山中に組織し、様々な暗号を傍受し解析していた。映画は、モールス信号で解読するその部屋を、動きのあるカメラワークでとらえタイトルになる。
ところが、突然、その信号が途絶え、三日して聞こえたときは、全く別の物に変わっていた。つまり、周波数を完全に変えたのである。あせった701部隊は諜報員の学寧に優れた聴力を持つ羅を探させるが、彼をみつけたものの、彼は不倫が発覚し、とてもつれて帰れない状態だった。
たまたま、そこに彼の弟子で、盲目だが、並外れた聴力の持ち主何兵をみつけ、連れ帰る。彼はほんのわずかの時間で120の周波数を見つけだすのである。
こうして、スリリングな展開で、どんどん話は先へ進む。何兵の学寧への恋心、701部隊のリーダー老鬼と学寧の恋なども絡み合い、物語はどんどん深みを増してくる。
デジタル映像だが、流麗かつ縦横無尽にとらえるカメラワークも、緊張感を生み出し、やがて、敵のリーダーで重慶の名前を持つ男をキャッチし、その排除のために学寧が送られる。
一方学寧の計らいで、何兵は手術で視力が回復する。ところが、視力の回復で、今までの聴力の冴えが鈍り、聴き違えたために学寧が殺されてしまうのだ。
何兵は再度目をつぶし、学寧のかたきをとるため、重慶を探し出し、部隊全員の協力で、重慶等を殺す。クライマックスが、5人の、重慶と名乗る人物を突き止め、学寧の葬儀の場面、新生中国の空軍設立の祝賀式と交互に写しながら、重慶たちを確保していく。
全体をセピア色で統一し、動きのあるカメラワークを駆使した映像演出の緊迫感と、暗号解読していくサスペンスフルな展開、何兵と学寧の人間ドラマも交えたストーリー構成もしっかりした一級品のドラマで、香港映画の底の深さを実感させる秀作でした。素晴らしい一本です。