くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「おもてなし」「しあわせの絵の具 愛を描く人モード・ルイ

kurawan2018-03-08

「おもてなし」
田中麗奈目当てで見に行った映画ですが、本当に中身のない映画でした。監督はジェイ・チャン

琵琶湖畔の老舗旅館明月館が倒産寸前で台湾の知人に購入されるところから映画が始まる。

そして、経営立て直しに来たジャッキーはこの旅館を利益を生んで売却するために、その場限りかもしれない計画を進める。

この旅館の娘で女将の梨花はそんなジャッキーと対立しながら、古い旅館を守ろうとする。というのが物語なのだが、そのどれもまともに描けていない。

ラストは強引にハッピーエンドになって治るものの、登場人物の心の成長など全く描けていないし、題名の由来になる教育シーンも適当で、なんの取り柄もない映画だった。ただ、最近、こういう作品にもどこか自分の人生を考えることが多くなった。歳ですね。


「しあわせの絵の具 愛を描く人モード・ルイス」
これは素敵に良かった。絵が美しいし、ドラマとしてもとっても静かで魅力的、しかも主演の二人が素晴らしく、映画全体がハーモニーを奏でるように展開していきます。久しぶりに心に響く名編に出会った感じです。監督はアシュリング・ウォルシュ

極度のリュウマチで、歩くこともままならないほどのモードは一族から疎まれていて、彼女の世話を兄のチャールズがおばさんに押し付けるところから映画が始まる。しかし、しっかり者のモードは、自分に対し辛く当たる周囲の人々の気持ちを指し、自ら自立することを決意。

ある時、近くのドラッグストアに寄った時、いかにも無愛想な一人の男が家政婦募集の張り紙をして帰るのを見つけ、早速無理やりその男の家に行く。その男は港で魚を取り売りあるくエベレットという男で、無愛想な上に不器用でぶっきらぼうの愛想のない男だった。こうして物語が始まる。

ロングで引いたエベレットの家までのまっすぐな道を捉えるカットが繰り返され、空を大きくとった広々した画面作りがとにかく美しい。

汚い壁を綺麗にするなら何をしていいという言葉に、モードは幼い頃から描いていた絵を壁に描き始める。エベレットもモードもお互いに不器用でどこかトラブル続きだが、さりげなくモードに優しく接するエベレットの姿がとにかく微笑ましいほどに素敵。

ある時、エベレットの顧客でサンドラという女性が訪ねて来て、たまたま壁に描いたモードの絵を見て惹かれ、手書きのカードを描いてくれと頼む。そして次第にモードの絵は彼女を通じて人気になり、ニクソン副大統領も注文したというニュースから一気に有名になる。

しかし、相変わらずエベレットは無愛想だし、生活も慎ましく、最初の小屋のような家だけ。しかし、画面は次第に前半の殺伐として色作りから、美しい景色を主体にしたものに変わり、家中がモードの絵に埋められて来て明るさを増してくる。

冬が来て春が来て、ある時、モードが若き日に死産したと思われた娘が生きていることがわかり、何気なくその居場所を探して来たエベレットが彼女を連れて行くあたりも本当に素敵。

しかし、よる年波で、モードの病気は重くなり、肺気腫も起こしてしまう。そしてある夜呼吸困難になりエベレットが病院へ連れて行くが、まもなくして彼女は息を引き取る。

とにかく、終始無愛想で、とっつきにくいエベレットが、なかにつけてモードの思いに応えるシーンがとっても素敵で、モードも彼を愛していたという話以後のセリフに涙が溢れました。実在の画家モード・ルイスの半生の実話とはいえ、本当にいい映画でした。