「風が踊る」
さわやかな、まさに風が吹き抜けて行くような青春映画でした。監督の第二作目で、まだスタイルが確立する前とはいえ、とってもテンポの良い音楽の使い方と軽快な場面転換が楽しい作品でした。監督は侯孝賢(ホウ・シャオシェン)。
洗剤の宣伝映画撮影にスチールカメラ担当で来ていたシンホエは、目の見えないチンタイという青年と知り合う。撮影が終わり、台北に戻ったシンホエは、たまたまチンタイに再会、次第に二人は親しくなって行く。まもなくしてチンタイは角膜の移植が成功して目が見えるようになる。
たまたま、小学校の代用教員で一ヶ月台北を離れていたシンホエにチンタイは会いに行き、さらに二人は親しくなって行く。そして、チンタイはシンホエにプロポーズする。シンホエは撮影の時の監督と親しくしていたが、結婚まで考える仲ではなかった。しかし、シンホエはその監督とヨーロッパへ旅行に行く予定をしていた。
渡欧するまでの一週間、チンタイはシンホエとさらに親密になるが、シンホエが監督と渡欧すると聞いて複雑な気持ちになる。シンホエは、チンタイへの気持ちは変わらないのと結婚の承諾の手紙をチンタイの部屋に残し空港へ向かう。手紙を見たチンタイはシンホエの元へ向かい、空港で抱き合って映画は終わる。
当時の台湾の流行歌でしょうか、とにかくテンポの良い曲を散りばめた上に、シーンからシーンへの切り替えがとってもリズミカルで、それでいて、面倒なエピソードは排除して、チンタイとシンホエの恋物語を小気味よく描いて行くストーリーが本当に風がそよぐようにさわやか。見終わって、気持ちよくなれる一本でした。
「珈琲時光」
特に起承転結のあるドラマでは無く、日常の一瞬を捉えたという感じの物語で、全体に長回しを多用し、屋内シーンはフィックスで延々と会話を映し出して行く映像は明らかに小津安二郎を意識した作りになっています。面白い作品ですが、ちょっとしんどいかった。監督は侯孝賢。
主人公陽子が、自室で洗濯物を干している場面から映画は始まる。彼女は台湾の音楽家江文也を研究しているという設定だが、ほんのワンシーンしか出てこないので、その辺りは解説頼み。この日、知り合いの肇の古本屋へ行き、江文也のCDを手に入れる。肇は鉄道マニアで、鉄道の音集めを趣味にしている。
この日、陽子は実家に帰ってきた。両親に妊娠していることを告げ、台湾の男性が父親だが結婚する気はなく、一人で育てるという。娘の言葉にこれという反応もしない両親。淡々と日常が描かれて、再び陽子は東京へ戻る。
映画は、肇と陽子の日常をただひたすらカメラが追って行く形で展開し、終盤、両親が東京へ出てくるものの特に大きなドラマ展開はない。そのまま、列車のカットで映画は終わっていきます。なんとも淡々とした映画です。凡作ではありませんが、じゃあなんなのだろうと感じてしまう一本でした。