くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「最後のランナー」「曼陀羅」「吶喊」

kurawan2018-08-20

最後のランナー
炎のランナー」のエリック・リデルのその後を描いた物語ですが、これというものもない普通の映画でした。まぁ、物語の興味のみという作品でした。監督はスティーブン・シン。

オリンピックで金メダルを取ったエリック・リデルだが、たくさんのスポンサーオファーを断り、自分の信念で生まれた地中国へ渡り結婚したというナレーションから映画が始まる。

現地の中国人で親しくなったジ・ニウが語る物語として展開していく。

やがて日本軍が侵攻して来て、リデルは収容所に収監される。収監先をやっと見つけたニウがリデルを支援するために奔走するのが物語の中心となる。

いかなる妨害にも信念を貫くリデルの姿が展開していくが、やがて彼は病になる。そして終戦の五ヶ月前に脳腫瘍のために亡くなって映画が終わる。

なんのこともない普通の映画である。


曼陀羅
農業とエロティシズム、と、なんともよくわからない映画でしたが、極端なローアングルと大胆な移動撮影を切り返し、シュールな構えでしっかりとは意図された構図を駆使した映像は、さすがに才能を感じざるを得ません。監督は実相寺昭雄

恋人を入れ替えてSEXをする男女の濃厚なシーンから映画が幕を開ける。行為が終わって海岸に出ると二人の男がやって来て、男の方を気絶させ、残った女を犯す。

このホテルのオーナーは、狂った男女のカップルを自分たちの仲間にし、農業で自給自足するユートピアを作ろうとしていたのだ。という話だと思う。

とまあ、よくわからない展開ながら、その接着剤として何度もレイプシーンやSMシーン、SEXシーンが繰り返され、時に土を耕す場面なども挿入。堅苦しい、インテリ学生のようなセリフの連続で語られる物語は、シュール以外の何者でもない。

しかし、一つ一つのカットの構図は実に美しいし、切り返しのうまさは絶品の近い。極端なローアングルで捉える画面に大胆な移動撮影が組み合わされ、時にクローズアップを交える絵作りは一級品である。

結局、ユートピアの建物の巫女が汚れたからと隠岐の島へ主人公達は船出するが、寺の建物が炎に包まれる実相寺昭雄監督得意のシーンのあと、船出した船は難破し全員死亡。残った主人公の若者はホテルを売り、日本刀を購入、新幹線のシーンに続いて、列車がトンネルの中に消えて映画が終わる。

全くはてなの連続であるが、映像作品としては一級品である。そこがすごい。


「吶喊」
痛快!青春娯楽時代劇の傑作でした。とにかく、余計なことはそっちのけに真っしぐらに突き進むバイタリティあふれる展開が爽快。若さがほとばしる痛快さに終始、引き込まれてしまった。監督は岡本喜八

一人の老婆が、まるで昔話をするように、百姓の千太の話を語り始め幕を開ける。そして、一物に自信のある百姓の千太が、嫁御を探そうと街道でお糸に襲いかかるところから物語が始まる。

時は幕末、戊辰の役で奥州に官軍が迫って来ている。官軍の密偵万次郎が千太と出会ったのもそんな時。そこへ奥州軍の十太夫が絡んで、迫ってくる官軍に一矢報いようと烏組なる遊撃隊を作り暴れ回るのが本編。

とにかく、面白いことなら何でも飛び込んでいく千太と万次郎、それに気っ風のいい十太夫のキャラクターが映画をどんどん引っ張っていく。

そこに、明るい空気感で女好きな千太とテルの陽気なSEXが繰り返され、お糸のしたたかな生き方も描かれて、とにかく全編青春そのものの空気が最高。

やがて奥州軍は敗れ、官軍が制圧してくるが、最後までテルと交わる千太のシーンなど、ラストまで手の抜いていない脚本も面白い。

最後に冒頭のおばあさんが話を締めくくって映画が終わる。痛快という言葉がぴったしの青春時代劇でした。