「ヘラクレス」
ここにきてなんでこの手のコスチューム映画なのかという感じだが、まぁ、気楽に見るにはこれで良いかなという一本だった。
監督はブレッド・ラトナー、主演はドウェイン・ジョンソン。これという目玉もない映画である。
物語は、ギリシャ神話では神の子というヘラクレスを、人間として描き、噂を広める甥の存在を付け加えて、彼を神のようにふれ回ったことにしているという前提で始まる。
でてくる人物の名前がはっきり区別着かず、ストーリーはよくわからないのだが、単純なアクションなので、全く不自由がない。
バトルシーンも、いまどきのCG撮影で、特に変哲もないし、本当に普通の映画。見終わって、こんなものかという作品だった。
「愛人」
市川崑監督作品ゆえに、売布神社シネピピアまででかけた。
舞台戯曲を和田夏十と井上俊郎が脚色した脚本だが、機関銃のようなせりふの応酬で突っ走るモダンコメディの傑作だった。とにかく、テンポがいい、リズムが軽妙、展開が軽やか、せりふの間が何とも絶妙、それでいて、どこかドキッとする毒も秘めている。本当に市川崑という人はすばらしいなと改めて思った。
物語は、志賀高原のテニスコートを俯瞰でとらえるシーンに始まる。やがて霧が覆ってきて、まるでこれからの物語を覆い隠すように真っ白になっていく。テニスもできずに仕方なく部屋に戻る昌充と妹の麻納。父は映画監督の鉄風。ここのヴィラで、昌充と麻納は一緒に泊まっている美予と諏訪が、姉妹に見えるが実は母と娘だと話している。
そして、時は冬になり、諏訪と鉄風の結婚式。やがて、鉄風と昌充、麻納と美予と諏訪が一緒に暮らすことに。そこには居候で助監督の須賀が同居していて、物語は彼らの凡々たる日々の中の恋愛物語へと進んでいく。
昌充は美予が好きで、麻納は須賀が好きで、しかし、須賀は美予が好きで、美予は・・・ところが、ここにきて、須賀はこれまで結婚しなかったのは諏訪さんに恋いこがれていたからだと白状して物語は大団円へ進むことになる。
まさに舞台劇のような展開で、カメラがじっくりとよったり引いたり、俯瞰にとらえたり、ストップモーションしたりと、ストーリーのテンポを生み出していく演出が絶妙で、しかも、せりふの間合いが実にうまいので、コミカルなシーンを挟みながら、あれよあれよと展開していく。
結局、雨の日に、須賀は家を出ていってエンディングになる。
今見ても、モダンなスタイルが色あせないくらいのすばらしい映像作品で、さすがにこんなしゃれた映画はそうたくさんあるものではないな、とあきれるほどに惚れ込んでしまう一本だった。見事。