甘酸っぱくて切ない青春ラブストーリーかと思って見に行ったが、なんの、そうとう毒のある映画だった。
映画は主人公太田がプールサイドでこちらを向いているアップから始まる。高校一年の彼は水泳部の補欠である。実は彼は、まだ毛が生えていない。それを着替えの時にからかわれる。
クラスではそのすべすべした肌をからかわれるが、後ろに座っている坂下という女の子が実は太田が好きなようである。
ある日、部室で一人、腕の毛を剃っている部員後藤を目撃する。そして、程なくして、後藤は太田に、毛を剃ってくれないかと頼むのである。
河原に自転車で乗り付け、橋の下で太田は後藤の腕の毛を剃る。太田のイメージ映像で、剃るのは木を切るイメージ。そして、女性を目の当たりに感じる姿は光のイメージをかぶらせる。
そして後藤は、足の毛も剃ってほしいと頼むのだ。スカートからでた足を剃る太田、当然思春期の性のうずきを感じる。
週一回、月曜日のこの行事が続くが、毛を剃ることで、タイムがよくなる後藤。やがて顧問の二宮先生の目に留まり始める。
さらに、後藤はクロールをするために脇の毛も剃ってほしいと太田に頼む。このシーンはさすがにかなりエロティックになる。太田に気のある坂下が二人をつけて、とうとう、その場面を見てしまう。そして、後藤に何やら告げ、後藤は太田との距離をとり始める。
ここから物語が急展開していく。
太田は剃った毛を筆箱に並べ、自分の部屋の机に隠し、時々、口に含んだりして悦に浸る。確かに、初な少年の行動としてほほえましいのだが、後藤の毛を剃れなくなってきて、どんどん彼は、思い詰め、狂気のようになっていく。
一方、後藤は二宮のことが実は好きで、接近するが、二宮も、後一歩ぎこちない。このエピソードが、次第に太田の異常な行動と交差して、そこへ、坂下の純粋な心がかぶる展開は、ちょっと不気味な様相を帯びてくるのである。
太田は、理科室の薬品を盗む。それは、かぶればやけどして二度と毛が生えないのだという劇薬なのだ。後藤が、太田を避けるのは、太田の頭の毛にさえも嫌悪感を持っているのだとさえ考え始めているのである。完全に異常をきたした太田は、二宮を避け、プールサイドにきた後藤に、薬品を持って迫る。しかし、後藤は、必死で太田を説得、二人はプールへ。
太田は、後藤のあそこの毛を剃らせてほしいとさえ頼むのであるが、もうここまでくると異常な心理である。それでも、了解した後藤に迫るが、やはり、できない太田。
そして、二人は冷静に戻り、太田は後藤に、毛のそり方を教えると答える。
夏休みが終わる。部室で着替える太田、股間を見ると毛が生えている。それをからかう先輩。毛を剃ってやろうとからかう人たちに、後藤が「私が剃ります」と答え、アップでエンディング。
剃毛というかなりきわどいテーマを背景に描く、高校生の少年少女の物語は、一歩間違うとかなり刺激的になってしまう。その危うい感覚を前半で描き、現実か妄想かわからないような描写で、思いつめて行く太田のイメージをが前面に出る後半部は、独特の色合いがある。
作品としては、かなり脚本が荒い気がする。坂下の存在や二宮、後藤の父などが、微妙なニュアンスで、不安定な存在として映画のイメージを作り出すはずが、今一歩弱いというか描ききれていないのはちょっと残念。全体に面白い題材の作品になったことは評価できるかなとおもえる映画でした。