くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ラビング 愛という名前のふたり」「雨の日は会えない 晴れ

kurawan2017-03-15

「ラビング 愛という名前のふたり」
異人種間の結婚が禁止されていた1950年当時のアメリバージニア州を舞台に、実在したラビング夫妻の物語を描いた人間ドラマですが、非常に真摯に描かれたストーリーが実にいい空気を出している秀作でした。監督はジェフ・ニコルズです。

白人のリチャードと黒人のミルドレッドは幼い頃から近所に住み、やがて大人になっても恋人同士となり、この日、ミルドレッドはリチャードに妊娠した旨を告白して映画が始まります。

当然リチャードは彼女に結婚を申し込みますが、住んでいるバージニア州では異人種間の結婚は禁止されているため、ワシントンDCで届けを出し戻ってくる。ところが、突然保安官が現れ逮捕され、その上、有罪を認めた上で執行猶予のために25年間の州外退去を命じられてしまう。

故郷を離れることに抵抗がある二人に近づいてきたのは自由人権運動に賛同する弁護士コーエンだった。当然、この男は売名を目的にしているのが最初から見えているが、費用もかからず訴訟してくれるという誘いに、最初は反対するも、子供が交通事故にあったことがきっかけで頼むことにする。

そして裁判が始まるが、物語は裁判をすることでリチャードの周囲が変わってきたりする様子が描かれ、時は10年を超えてくる。もちろん、ラストは最高裁違憲判決となり、晴れて故郷に戻ってくるのだが、描き方がこのラビング夫妻の人間ドラマとしてきっちり描かれているので、非常にリアリティがある上に、真面目に流れを読んで行くことができるのです。

画面作りも落ち着いているし、とにかくラビング夫妻を演じた二人を含め、あまりメジャーな役者を使っていないのが成功している原因のような気がします。知識としても映画としてもとってもいい作品だったと思います。


「雨の日は会えない、晴れた日は君を思う」
ちょっと凝りすぎている気もしますが、ちょっと切なくて、胸に訴えかけてくるいい映画でした。こういう作り方もありだねと思える意味で、ちょっとした作品だった気がします。監督はジャン=バルク・バレ監督です。

エリート金融マンのデイヴィスの姿から映画が始まる。高層ビルにオフィスを構える妻の父フィルの会社に雇われて、順風満帆の日々を送っている。

ある日、妻の車に乗っている時に事故にあい、妻は死んでしまう。呆然とし自暴自棄になったディヴィッドはやることなすことに無気力になり、たまたま病院の自動販売機が不調だったことで、その会社に意見をする手紙を書いているうちに、担当のカレンと親しくなって行く。

特に恋愛感情もないのだが、デイヴィッドの姿を哀れに思うカレン、さらにその息子とも親しくなり、あることを思いついたデイヴィッドは自宅を破壊することで全てをやり直してみようと考える。そこで彼は妻が残した手紙を見つける。それは妊婦のお腹をエコーした写真で、妻は妊娠していた。

フィルが娘の財産を基にした基金を設立するパーティで、実は妻のお腹にいたのはデイヴィッドの子供ではないことを知らされ、さらにカレンの息子が暴力沙汰で入院、カレンが夫と別れるという出来事が立て続けに起こりクライマックスへ流れて行く。

細かいカットをモザイクのようにつなぐクライマックスは、一瞬戸惑ってしまうのですが、一気にラスト、カレンの息子の手紙で指定された場所に行くと、たくさんのビルが解体されて行く場面に出くわし、それを見て気持ちに整理がついたデイヴィッドはやり直す決意をし、走り出す。離れたところでカレンの息子がそれを見ている。爽快なラストは見事です。

ちょっと個性的な演出ですが、ぐいぐいと沈み込んで行く前半部分から異常行動で気持ちを紛らす中盤、そして彼に絡んでくるカレンやその息子たちの存在と関わりからクライマックスへという物語の構成が素晴らしい一本で、ちょっとした佳作というイメージの映画でした。面白かった。