くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「サヨナラまでの30分」

「サヨナラまでの30分」

それほど期待していなかったのですが、えらく良かった。青春映画の秀作っていうのに久しぶりに出会った気がします。カメラと編集が心地よいテンポを生み出して、曲の展開同様に映画が弾んでラストまで走っていく爽快感が最高でした。監督は萩原健太郎

 

主人公颯太は就職活動中の学生。人と関わることを嫌い、当然面接は落ち続けている。ある時、面接帰りに、寂れたレジャーセンターのプールでぼんやりしていてカセットテープの入ったウォークマンを見つける。

 

時間が遡り、一人の少女カナが走っている。前を歩く四人の男子を追い抜いて野外フェスに飛び込んでいく。音楽に乗る彼らのカット、そしてやがて五人は一緒にバンドを組み演奏活動を始める。リーダーはアキ。やがてアキとカナは恋に落ちるが、ある雨の日、アキは交通事故で死んでしまう。時が止まり、バンドは解散。アキはカナにカセットテープの曲を入れたウォークマンを渡していた。ここのフラッシュバックの映像が実にうまい。

 

現代、颯太がウォークマンのスイッチを入れると、突然自分が別の人物に変わってしまう。それは死んだはずのアキだった。アキはカセットテープのスイッチが入っている間颯太の体を借りて蘇ることができた。陽気で前向きなアキは正反対の颯太に変わって、面接も大成功していく。アキは、かつてのメンバーのカフェに行くが、颯太の姿のアキは受け入れられない。道でカナに抱きついても嫌がられるばかりだった。

 

アキが颯太の体で甦れるのはカセットテープの片面が終わる三十分だけで、その度にスイッチを押さないと入れ替われなかった。やがて、颯太の体を借りたアキはバンドメンバーと仲良くなり、次第に一緒に演奏するようになる。しかし、入れ替われる時間は少しづつ短くなっていた。

 

カセットテープに入ったアキの記憶がアキを蘇らせていたので、次第に上書きが増えると自然とアキの姿は減っていったのだ。カナをバンドに入れようとするが、アキを忘れたくないカナは承知しなかった。

 

やがて、念願のフェスに申し込んだバンドメンバーはフェスに向けて練習を始める。颯太はアキと共同でカナを入れるべく曲を作り、カセットテープに入れてカナに渡す。しかし、次第に思い出が上書きされてきて、アキの時間も消えるのが目の前に迫っていた。そんな中、颯太はバンドをやめることを仲間にメールする。結局、颯太ではなくアキを見ているカナが一瞬見えたからだった。

 

フェスの日が来る。颯太は最終面接に行き、そこでやっと前に進む決心がつきフェスに向かう。カナは颯太にもらったカセットを聞き、カナを忘れて颯太と一緒にやりたいとフェスに向かう。

 

いよいよステージ、アキは最後にウォークマンのスイッチを入れて欲しいと頼む。颯太がスイッチを入れ、体を借りたアキは、実は自分はこのバンドのファンだと宣言し颯太の存在を認めてやる。そしてステージで熱唱する中アキは消え颯太がステージで歌い映画は終わる。

 

爽やかな青春映画で、細かいカット編集でリズムよくストーリーを紡いでいく演出がなかなかだし、入れ替わりの時の描写もうまい。脚本も良くできていて、細かい穴はあるものの、本当にいい映画でした。