くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「眠る男」「埋もれ木」

kurawan2014-07-11

「眠る男」
非常にクオリティも高いし、画面も実に美しいが、いかんせん、淡々とした物語があるようなないような前衛的な作品で、正直最初から最後まで、眠気が消えることがなかった。

映画は、夜の闇に浮かぶ一軒の家、月のように丸い明かりをバックに一人の男が横たわっている。どうやら、山に行って落ちてしまい、眠り続けているという。男の名は拓次。

雨戸を開けると、外に一人の青年ワタルがじっと待っている。木にしがみつきながら、拓次を毎朝訪問しているのである。

物語は、この拓次が横たわる村での、日常の物語のようである。水車小屋で一人水車を回す老人、メナムという名のスナックにいるインドネシアの女性。

スナックの電気工事にやってくる男、それぞれが織りなす物語に、特に脈絡もなく、クライマックスは、拓次の魂が家を出ていって、葬儀が行われ、能が舞われ、いつの間にかエンドクレジットが上がってくる。

理解できたのかどうかさえ疑うのだが、真横に構えた構図を多用した画面づくりが実に美しいし、遙か彼方の塔の上で話す二人の女子高生のショットなど、最初は、そこにいるのかどうか差がつかないほどロングショットである。

これはカメラマンの腕というより、小栗康平の映像感性がなせるもので、それ故に、映画作品としてはレベルが高いのだ。しかし、物語は完全にシュールな世界。それを楽しむ一本だった気がする。


「埋もれ木」
三人の女子高生が、リレーで物語を作ろうという会話から映画が始まる。そして、彼女たちが語る話に、現実の大人たちのエピソードが絡んできて、それが融合しあいながら、未来へ進むファンタジーで、それぞれの話が独立して展開するような物語構成のために、一本のストーリーが理解できない。

ただ、小栗康平監督ならではの、真横にフィックスで構える構図は、さすがに美しいし、コンビニの上空に巨大な満月が浮かんでいたりする幻想的なシーンもなかなかの物である。

ゲートボール場に突如現れた、古代の森林の遺跡のような埋もれ木。その森林を掘り起こして、そこを少女たちが考えた物語のらくだを引いて行進したり、まるで夢のような世界がクライマックスになるが、全体に完全な非現実な世界ととらえてみていかないと、ストーリーが追えない出来上がりになっている。

ただ、その幻想的なファンタジーが癖になるような一本で、なかなか嫌いじゃないなと思える映画でした。