くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「俺たちに明日はない」

kurawan2014-07-24

ほぼ30年ぶりの見直しであるが、やっぱり名作というのは、寒気がするほどにすばらしい。

タイトルの出し方からエンドクレジットまでが、まるで一瞬の夢のように駆け抜けていくリズム感がある。これはもう、アーサー・ペンの演出力、ウォーレン・ビーティやフェイ・ダナウェイなどキャストの演技力もさることながら、その才能に加わって、何らかの偶然、たとえば、そのときの天気、そのときのスタッフ・キャストの体調、空気、なにもかもがコラボレートして、二度と作れないような傑作を生みだしたのだろう。

映画は実在のボニーとクライド、そして彼らの周りの人々の古くさい写真にかぶるタイトルから始まる。そしてメインタイトルの後、物語は、軽快なカントリー&ウェスタンのリズムに乗って、ハイテンポで展開するが、それぞれの登場人物のキャラクターが見事に描き分けられているのが、すばらしい。

そして、ストーリーの転換点は後半、ボニーが母親に出会うシーンである。ここで、母が「一生逃げるだけだよ」と寂しそうにつぶやく。その言葉に、ショックを受けるボニー、ここから、二人の青春ドラマが、親子の物語へと急展開、クライマックス、息子のモスを何とか悪い道から引き離すために、警察にボニーたちを売るモスの父親の姿へと流れていくのだ。

実在のギャングの話だが、果たして、ボニーとクライドが殺される前日に、クライドがやっと男としてボニーを本当に抱くことができたのかは誰もわからない。ここは明らかな演出であるが、当然、このエピソードがラストシーンに切なさを呼び起こす。

そして迎える、ラストシーン、今更いうまでもない。モスの父親がトラックの故障をしている演技で、ボニーとクライドを止める。草藪に隠れている警官たちの姿が、草の揺れ動きだけで見せる。彼方から、トラックが一台やってくる、鳥が飛び立つ、ボニーとクライドの顔のクローズアップ、ぱっぱっと変わる教科書のような編集の後、4000発の銃弾が浴びせられる名場面へ。

トラックが近づく、警官たちがでてくる、暗転,THE END。これが名作である。これ以上なにも書くことがない。これが名作なのだ。