「めまい」
何度目になるだろう、アルフレッド・ヒッチコック監督の傑作を再見。
今更ながら、さすがに最高傑作というだけのことはあります。見事です。五十年ほど前の作品なので、テンポが今に比べスローなのは否めませんが、物語の構成のバランス、畳み掛ける展開の妙味、ストーリーの中に挿入されるヒッチコックタッチと呼ばれる驚くようなカメラ視線やカットの面白さは、おそらく今の映画では誰もなし得ない。
オープニング、一人の女性の顔のアップから、バーナード・ハーマンの曲が被り、モノクロームからカラーに変化、渦巻きが次第に目に浮かび始める。このオープニングタイトルだけでもこの映画が怖いほどの一本だと感じてしまいます。
そして本編。主人公ジョンが夜の街、屋根の上を逃げる犯人を追っていって、おちかけ、警官に助けられようとするが、警官が落ちてしまい、そのトラウマで高所恐怖症になる。
そして本編がスタート。物語は今更なので割愛しますが、赤を基調にした映像から、みるみるミステリアスな展開へ、そして、再会した時点で、真相のカットが挿入されて、後編へ流れて行く。
ラストシーンまでみるみる主人公ジョンが異常な様相を帯びてくるが、ネックレスを見て真相に気がつき、クライマックスへ流れて行く。このストーリーテリングのうまさに、最高傑作の理由を知ります。
結局、キム・ノヴァク扮するヒロインは塔から落ちて、物語は終わりますが、主人公ジョンの彼女とのことはどうなったのだろうという余韻を残していることに気がつくのです。
何度見ても引き込まれる名作、これがヒッチコックの世界ですね。
「ヒッチコック/トリュフォー」
いうまでもなく、伝説に近い名著ができるまでを描いたドキュメンタリーです。といっても、写真による紹介とコメント、現代の巨匠たちのインタビューで綴られて行く。時折挿入され、説明の材料になるヒッチコック映画の名作の数々を見る方が結構楽しかったりする。
考えてみれば、自分が生まれた年あたりがその全盛期に近かったヒッチコックなのに、今尚、その映像の魅力は消えることがないというのはすごいなと思う。映画ファンの私も、おそらく天才と呼べる映画監督はこの人しかいないだろうと思えます。
この映画のインタビューに基づいた本は私も持っているので、正月にはゆっくり読み直して見ましょうかね。