「合衆国最後の日」
リアルタイムで見た作品を40年ぶりくらいで見直した。監督はロバート・アルドリッチである。
リアルタイムで見たときは少々退屈な映画だという印象でしたが、なんの、陳腐なサスペンス映画など足元にも及ばない硬派の傑作だった。二時間半近くあるが全く退屈しないし、スリリングなシーンの挿入するタイミングも実にうまい。さらにスプリットイメージを使った緊迫感あるシーンは絶品で、安易な映像演出が施されていないことが明確である。
物語は、いわゆるベトナム戦争におけるアメリカの政府の態度を国民に明確にするべく一人の退役軍人デルが仲間を連れてICBMミサイルの発射基地を占拠すると言うもの。
大統領役のチャールズ・ダニングの迫力もすごいために犯人役のバート・ランカスターに食われていないのがじつにすばらしく、大統領を取り囲む政府要人の個性も見事に描かれている。
占拠されて一気に緊張が走る政府との丁々発止のやりとりから、ミサイル発射される寸前で止まる中盤の緊張シーンに続いてクライマックスの大統領が身をもって犯人と対決、結局、極秘文書を公開することを約束した長官が大統領のいまわの際で首を縦に振らず、国の威信のために死んでいく大統領を俯瞰でとらえるエンディングまでが見事。
一見、単純なサスペンスであるが、その背後にある国の威信、核問題、ベトナム戦争、大国の見栄、大統領さえも犠牲にする国というものの怖さが見事に描かれている。製作から4年後という近未来の設定もおもしろい。
なぜ今更ニュープリントかと思ったが、それなりの値打ちのある名作だったのだと改めに再認識。見直してよかった。すばらしい映画だった。
「カリフォルニア・ドールズ」
おもしろいという噂には聞いていたが、女子プロレスの映画となるとつい後回しにしていた作品をニュープリントで見ることができた。
うわさどおり、めちゃくちゃおもしろかった。物語を盛り上げるというのはこういうのをいうのだとお手本になるような傑作でした。クライマックスは手に汗握るというよりおもしろくておもしろくてどんどんスクリーンにのめり込んでしまいました。その上ラストシーンはもう拍手です。事細かな場面を解説なんかできません。とにかくおもしろい、とにかく見てほしい。そんな大傑作に出会った気がします。
ピーター・フォーク扮するしがないマネージャーハリーは田舎町を女子プロレスのチーム”カリフォルニア・ドリームズ”をつれて興業して回っている。時にずるがしこく、時に感情的に、時に野心を露骨に見せる人間くさい人物だが、楽しませてもうけるという目的は決して失わない。
この三人がその日暮らしのどさ回りから次第に名前が売れてきてチャンピオンになるまでを描くのですが、前半のしがないシーンの連続が中盤から見る見る華やかになってクライマックスで頂点に盛り上がっていく様はまさに映画の醍醐味です。
タイトル戦で派手に登場する演出を作り出すハリーだが、決して不正は絶対しない。そして、観客をみんな味方に付けてどんどんその場を盛り上げていく。画面はそんな熱気に満ちた会場をところ狭しととらえていくクライマックスがとにかくすばらしい。
いままで、クライマックスにプロレスやボクシングなどを扱った映画を見てきたがおそらくこの「カリフォルニア・ドールズ」が最高傑作だろうと思う。
ハッピーエンドで終わるのだが、それもあれだけ盛り上げてのラストシーンだから映画の中の観客も見ている私たち観客ももう拍手喝采をしているのである。絶対に見てほしい一本です。日本ではソフトが未発売というのが信じられないけれど、これは必見の一本でした。いやぁおもしろかった。