くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「遊び」「曽根崎心中」「でんきくらげ」

kurawan2014-09-25

「遊び」
さすがに時代を感じさせるとはいえ、これほどの演出ができる監督は、そうざらにいるものではない。青春映画の傑作として位置づけても十分な作品である。

不幸のどん底で、殺伐とした青春を送っている少年と少女が、ふとしたきっかけで知り合い、その欲望のままにお互いが曳かれあい、純粋すぎるラブストーリーが展開する。

関根恵子扮する少女の、あまりにも純粋無垢な描写、それに、負けじと演出される少年の、粋がっているものの、あまりにも初な姿。その二人が、いかにもうらぶれた両親の元で育ち、強がりをいいながらも生きてきた先で出会った、夢見るような純粋な恋、その刹那さ、可憐さに浸るのもつかの間、当然のように見えてくる二人の、存在することのない未来。

もちろん、行き着く先は破滅である。そのラストシーン、今にも沈んでいく船にしがみついて、大海原に流れていく二人のシーンは、おそらく映画史に残る名シーンだろう。見事あ。これが増村保造の力量である。

デビュー作の「くちづけ」も見事なラブストーリーだが、後期の傑作として位置づけて十分な名作でした。本当にすばらしい。


曽根崎心中
初めて見たときの衝撃が忘れられず、再度みることにした。

やはりすごい。オープニングからエンディングまで、涙がでるほどにのめり込んでしまう。ある意味、隙がなさすぎて、息苦しいといえるのかもしれない。もう少し遊びがあってもいいかもしれない。しかし、そうはいっても梶芽依子の迫力に圧倒されるし、台詞回しに引き込まれるし、ストーリー展開、細かいカットとカットの緊張感に釘付けになる。

私的には増村保造の最高傑作だと思う。もちろん、一番好きな映画は「大地の子守歌」であるが、それでも、作品的には随一だろう。見直して損のない一本、見事な傑作だった。


「でんきくらげ」
増村保造の作品は、女の情念、生きざまを徹底して描くと、時として、非常にその主人公に嫌悪感を持ってしまうことがある。それが、ラストで、力強さに変わればいいが、そうならないケースもないわけではない。その一本がこの作品でした。

主人公の女性は、飲んだくれの男好きの母親に育てられ、その男にレイプされて、その男を殺した母親が刑務所に入ってから、男を手玉に取るように扱って金をためていく。その生き方がすさまじいが、この作品では、その前に、この女性にのめり込めない部分が多々みられるシーンがある。そのために、最終的なこの女性の決断に合い入れない思いを持ってしまった。

確かに、増村保造ならではの女の描き方である。時に、惚れた男に徹底的に食い下がっていく。それが執拗なくらいにである。逃げようとする男を絡めとるほどの怖さを見せるが、その根底にあるのは、女の悲しさである。

ところが、この作品では、その悲しさよりも、醜さに見えてしまう。そこがちょっと、好みにならない一本になった。
確かに、主人公の生き方はすさまじいが、どこかちぐはぐに見えるカットがちらほらする。それがのめり込めない理由だったかもしれません。