くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「妻二人」「薔薇いくたびか」「夜の素顔」「夜の罠」

kurawan2015-08-07

「妻二人」
増村保造監督の真骨頂に近い傑作。前半から後半にかけて見る見る物語が深みを帯びてきて、ストーリーの根幹、人間ドラマの神髄に迫ってくる演出は絶品。もう目を離せないほどに引き込まれてしまいました。

作家の卵の青年が、たまたま知り合った出版社社長の娘道子と結婚する。しかし、学生時代からの愛人順子と、たまたま飛び込んだbarで再会するファーストシーン。

見る見るストーリーが深遠に飲みこまれていく。順子を演じた岡田茉莉子が抜群に愛らしいし、かわいい。これこそ、大女優の演技力である。

偶然犯した殺人から、みるみるストーリーは急展開、女のドラマへと増村監督の得意分野へ移っていくと、物語がものすごく色づいてきて、一気にラストまで引き込まれる。

いやあ、おもしろかった。やはり増村保造監督の女の世界は好みです。


「薔薇いくたびか」
胸がきゅうっと締め付けられるような、照れくさいほどにこそばくなる純愛映画でした。監督は衣笠貞之助です。

徹底的にステロタイプ化されたすれ違いドラマが繰り返されるストーリー展開で、これでもかというほどにしつこい。

最初は、やや辟易としていたが、これがこの映画のフィクションであると割り切ってからは、名作に見えてきました。

制作されたのが1955年なので、ここまで純血にこだわる時代でもないことを考えると、これは意図したものだと、見えてきます。

そして、時代の変遷をあざ笑うようなクライマックスからラストシーンににんまりとしてしまうのです。

決して、まじめなメロドラマではない空気を感じ取ると、とってもおもしろい映画だった気がしました。


「夜の素顔」
吉村公三郎監督の芸道もので、いわば、「サンセット大通り」的な話である。

丁寧な演出と、地に着いた演技合戦で、出だしから、ラストまで、しっかりと画面に釘付けにする力量は、さすがに見事なものである。

終戦間近の戦地から映画が始まり、やがて戦後、主人公は、持ち前の才覚と女の武器で、有名な日本舞踊の先生に弟子入りし、頭角を現し、やがて、パトロンを奪って、出世。しかし、事業を拡大するなか、弟子に足下をすくわれ、やがて、舞台の途中で心臓の病で死んでしまう。

主人公の女が京マチ子、足下をすくうのが若尾文子という設定。

周囲も芸達者ばかりで、圧倒的な迫力でグイグイと描いていくので目が離せない。
傑作というには、やや物足りないものの、なかなか見応えがありました。


「夜の罠」
コーネル・ウーリッチのミステリーが原作の作品ですが、ふつうのサスペンスでした。

あまりにご都合主義で展開する物語は、相当無理があるし、いいかげんに腹が立つほどだが、若尾文子作品の一本とした、見た程度の映画でした。

夫の無実をはらすために奔走する妻の物語で、当たり前のように危険な人物に接触していき、間一髪で助かりながら、真犯人を見つける。

原作通り、外国が舞台ならおもしろかったかもしれない、テレビサスペンスレベルの一本だった。