くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「静かなる男」「駅馬車」(デジタルリマスター版)

kurawan2014-09-29

「静かなる男」
今、この時にジョン・フォードをデジタルマスターでみる機会に出会った。

名作という声のある映画だが、正直、ストーリーの中身はほとんどよく理解できない。というか、あまりにその土壌が見えないストーリー展開なのである。

しかし、映画の作り方のうまさ、物語の展開のリズム、ただ、楽しませるという職人的な演出など、他の監督、特に最近の監督の足下にも及ばないほどのうまさがある。それは、芸術的とか、映像づくりの才能とかではなく、職人気質のうまさなのである。だから、ジョン・フォードはうまい。これこそ、映画人である。

物語は、アイルランドのとある町に、元ボクサーの男ショーンが帰ってくるシーンに始まる。そして、幼い頃すごした家を買い戻すのだが、その途中で、一人の女性メアリーに一目惚れし、彼女と恋に落ち、その兄貴と嫌煙の仲になり、アイルランドの妙な風習が絡む展開になる。

ショーンが家に入ったときに、暖炉の明かり、窓から射し込む光、激しい風、テーブルの上の花など、ちょっと凝った映像もみられるし、このあたりのこだわりも、芸術を目指すというより、これは映画を楽しいものにしようとするジョン・フォードのこだわりなのだ。

クライマックスはその兄貴とショーンの殴り合いの喧嘩に、村人たちが大喜びで双方に賭をし、盛り上がる。二人の喧嘩の周りに駆け寄ってきて盛り上がるという、ややリアリティに欠いたシーンであるが、いかにも娯楽映画的な設定が非常におもしろい。これが映画の作り方であろうかと思わせるのである。

結局、二人は仲良くなり、ハッピーエンドのラストを迎え、気持ちよく劇場をでることができる。これがジョン・・フォードのうまさである。


駅馬車
久しぶりに、スクリーンで見直した大好きな名作。再見して、改めてその作り方のうまさにため息がでる。

登場人物の使い分けがきっちりしているし、あちこちにちりばめられた伏線がしっかりとストーリーを牽引していくし、本編の物語が全くぶれない。それに、画面が美しい。グランドキャニオンの景色、空の雲、駅馬車の配置などもさりげなく工夫がみられる美しさなのである。しかも、ドラマ部分とアクション部分の配分、そしてもちろん、クライマックスの”映画が走る”といわれる名場面など、どれをとっても無駄がないのだ。

さらにエピローグで見せる粋なラストシーンに余裕が感じられる。これが、本物の名作である。