くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「柘榴坂の仇討」「バツイチは恋のはじまり」

kurawan2014-10-02

「柘榴坂の仇討」
それほど期待もしていなかったし、主演の二人はこういうドラマにでているときはあまり好きではないので、不安の中、見にいったのですが、なんと、生真面目に、真摯に、徹底的に正攻法で貫いた演出が、いつの間にか心を打ってしまう作品でした。

出だし、真っ暗な中に提灯が見える。侍たちの先頭に主人公志村金吾がいる。そこへ大勢の侍が切りかかってきて、夢がさめる。13年前、井伊直弼の駕籠を守り損ねたときの悪夢である。

物語は、13年前に戻り、駕籠周りの警護を仰せつかった志村金吾の話になる。嫁をもらい、お役目をいただいたが、桜田門外の変で主人を討たれてしまう。その仇討ちのために、ことを起こした水戸藩士たちを探す主人公の生きざまを描いていく。

一人また一人と、死んだり、とらえられたりして、残る一人佐橋十兵衛を残すのみ。世の中は明治に変わり、侍という存在が次第に消えていく。常にカメラは、主人公たちを真正面からとらえ、ひたすらまっすぐな視点で描いていく。

最初は、芸のない画面づくりだと思っていたが、そのあまりの生真面目な演出に、あら探しが失礼に当たるような気がしてくるのだ。

そして、圧巻は、クライマックス、佐橋の現在を知る秋元が志村を呼んで、諭す場面からである。雪景色に一輪光る寒椿をたとえに、生きよと告げる。そして、それに続いて、志村が佐橋に巡り会い、今や車引きになっている佐橋の車に乗り、柘榴坂で斬りあう。死を待ち望んでいる佐橋は志村に身を捧げるが、志村は、二人ともども、過去を捨てて生きようと諭すのだ。

この柘榴坂の場面が異様に長いのだが、二人の鬼気迫る演技で画面に引き込んでくれる。そして、なるべくして二人は未来に向けて一歩を踏み出し、志村は妻を佐橋は長屋の女に声をかけるのである。

確かに、地味だが、確かにいい映画だ。
オーソドックスすぎる時代劇の手法と、浅田次郎の見事な人間ドラマは、程良いバランスで完成品に仕上がった気がする。映像は、かつての時代劇全盛期の名作に比べるべくもないものの、なかなかの佳作に仕上がったのではないかと思う。ラストシーンは、のめり込んでしまった。


バツイチは恋のはじまり」
前作の「ハートブレイカー」が結構好きな、パスカル・シュメイユ監督の新作である。今回もフランス的な軽妙なコメディなのだが、ちょっとストーリーをてんこ盛りにした感じ、もう少し整理したらもっとしゃれた完成品になったような気がするのがもったいない一本でした。

冒頭、ちょっとアットホームな食卓の場面で、今まさに最初の結婚に失敗した女性を家族みんなで慰めている。

この家族は、だれもかれも最初の結婚は失敗し、二度目で幸福になるというジンクスがあるというのだ。

そして、その場にいたコリンヌが自分の姉イザベルの話を持ち出すところから物語は本編へ。

イザベルは、10年来、歯医者のピエールと同棲していた。しかし、子供がほしくなり、正式な結婚を考えるが、最初の結婚は必ず失敗するという家族のジンクスのために、デンマークへの短期結婚を企てるために旅立つ。

ところが、現地でドタキャンされ、たまたま飛行機の中で執拗に話しかけてきたジャン=ピエールをその相手に選ぶ。

ジャン=ピエールはこれからケニアに行くといっては、イザベルが追いかけ、マサイ族の結婚式に混じって結婚してしまう。ところが、フランスに戻っても、ジャン=ピエールにつきまとわれ、一方でピエールとの本当の結婚も迫りと、どたばたコメディがあれよあれよと展開。

いやな女になって協議離婚を考えてもらおうと、イザベルは、モスクワまでジャン=ピエールを追いかける。そこで、たまたま、イザベルの本心を知ったジャン=ピエールは離婚届けを渡して、イザベルの元を去る。しかし、10年間、型を押したような生活をしていたイザベルは、ピエールに別れを告げ、二度目の結婚相手に、サプライズだらけのジャン=ピエールを選ぶ。

という話を聞かせるコリンヌのシーンに戻り、失恋した女性は、たまたまやってきたピエールと仲良くなって暗転。

軽妙なせりふの応酬で、ニヤリとさせるうまいシーンも多々あるのだが、ケニアに行って、ライオンに出くわしたり、マサイ族にあったりという前半部分はちょっと遊びすぎの感があり、ここをクリアすると、意外にこの映画が好きになってくるから不思議である。

前作はこの、ちょっと凝ったコメディの作り方がうまくまとまっていたために、粋なラブストーリーとして、楽しんだのだが、今回は、ちょっとしたテンポの崩れが、支離滅裂な展開になってしまい、折角の冒頭の食卓の場面からの物語が今一つ生きてこなかった。

しかし、個性的な作り方をする監督であることは十分わかったし、好きな監督の一人になりそうな予感がします。傑作とまではいきませんでしたが、これはこれで好きな映画になりそうです。