くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札」「泣く男」「まほ

kurawan2014-10-21

「グレース・オブ・モナコ 王妃の切り札」
ネットなどでは非常に評判が悪いので、どんなものかと思って見に行ったが、思いの外、いい映画だった気がします。

なんと言っても、カメラワークが実に美しい。華麗な王宮を捉えるシーンでは流麗に、人物描写のドラマティックな場面では、小刻みなカットとクローズアップを多用する。その緩急がリズム感を生んで、映画が美しいのです。監督は「エディット・ピアフ 愛の讃歌」のオリビエ・ダアンだから、ある意味納得である。

物語は、前宣伝で執拗にアピールしていた、モナコ公妃グレース・ケリーの一発逆転の大計画というサスペンスが中心かと思いきや、それより、女優を離れ、公妃としてモナコ公国に嫁いだグレース・ケリーの苦悩の人間ドラマの部分の方が大きい。しかし、クライマックスにかけてのサスペンスフルな展開を前面に出さないと売りづらいストーリーゆえ、ああいう宣伝になったのでしょう。

実際、前半部分の苦悩の場面は、圧倒的な存在感で物語を牽引するフランク・ランジェラ扮する神父の存在が大きい。しかし、オープニングで、女優業と公妃との間で悩むグレース・ケリーの姿を、ヒッチコックを招くという導入部で見せた脚本はうまい。

そして、裏切り者が存在することに気がついたグレースが、その真犯人探しと、国の危機を救うべく完璧な公妃として演じきり、画策する終盤はやや物語の整理が甘くなってしまう。前半で女優として、映画の役を演じるという立場から、公妃を演じるという立場に変わるという展開が今ひとつ迫力に欠ける。全体の物語の整理が今ひとつ完成されていないために、軸としてのストーリーが見えないのである。

公妃として主催したパーティで、各国首脳を招待し、グレースは大演説をするのだが、そこが少し弱い。この演説で、ド・ゴール大統領の気持ちを動かしたのか、という迫力がもう少しあればと思うのです。

それでも、ニコール・キッドマンは、しっかりグレース・ケリーを演じきっていると思います。モナコ公国の華麗さと、立場もちゃんと描けていると思うし、それほど低レベルの作品ではなかったと思います。

最初から最後まで楽しむことができた一本です。


「泣く男」
典型的な韓国アクション映画という感じで、中盤からラストまでは、ドンパチと血まみれの銃撃戦に終始する。監督は「アジョシ」のイ・ボンジョム。

よく考えると、お話は混沌としていて、結局なんだったのという感じだが、全く飽きさせずに突っ走るバイタリティはさすがである。

オープニングがとていいです。とあるバーで舞台の歌を聴いている主人公ゴン。歌う女性のカットが細かく繋がれる。いっぽう、ゴンのそばに一人の少女。その子に鶴を折ってやり、ふざけて笑わすゴン。続いていかにも悪そうな男たちが入ってくる。

それを追って奥の部屋に行くゴン。舞台の歌手のカット、撃ち合いと殺戮。仕事を終えたゴンに、ドアの後ろに人の気配を感じて、銃を撃つ。ドアを開けるとさっきの少女が。そして倒れる少女。暗転、タイトル。

間違って、子供を撃ってしまったゴンの苦悩のシーンはほとんどなく、いきなり本編へ。どうやら、ロシアに売るファイルが消えたようで、その行き先を追求、そのターゲットの一人が少女の母で、彼女を殺すように依頼されるゴン。

そこへ、中国マフィアが絡み、警察が絡み、ゴンのかつてのライバルが絡む。さらに、少女の母チェは、意外と、会社で重役で、子供をないがしろにしていたというエピソード。さらに、極秘のファイルも手に入れているというくせ者だったりもして、一体悪者が誰かごちゃごちゃになる。

そんなこんなのなかにも、チェを狙ってくる殺し屋たちに、敢然と立ち向かうゴンの物語となっていく。あとはもう、どうやってラストを迎えるかという、ドンパチ戦である。

結局、チェに自分を撃たせて死んでいくゴン。その最後を見とるライバルの男。結局ファイルはどうなるのという感じだが、とにかく面白い。この中身のないバイタリティが韓国映画であるな、と感心する映画だった。


まほろ駅前狂騒曲」
飄々と展開するストーリーに散りばめられたユーモア、前作同様のこのシリーズだが、不思議なことに、物語に暖かい人間ドラマが見えてきて、見終わってほんのりするから不思議なシリーズである。

今回は、行天の娘はるちゃんを預かることになるのがストーリーの中心。例によって、仰天のツッコミと多田のストレートな演技が微妙に絡みながら展開していく。真木よう子を始め、周辺の脇役も個性派が揃い、味のあるエピソードの数々がお話に色を添えて行くからいい。この絶妙のバランスが大友立嗣監督は実にうまいなと思う。

クライマックスは、老人たちの微笑ましいバスジャックから、そこに乗り合わせた無農薬野菜を作る団体のリーダーで行天の幼馴染なども絡み、かなり無理のあるラストシーン、そしてエピローグへ続く。

ちょっと、ラストがくどいし、非現実的すぎる脚本の荒さが見られるが、そのリアリティのなさも不思議なムードになるから、このシリーズは楽しめるなと思う。続きがあるなら、期待したい一本でした。