くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ジョン・カーター」「コーマン帝国」「キリング・フィール

ジョン・カーター



ジョン・カーター
SF界の巨匠エドガー・ライス・バローズの名作「火星のプリンセス」の映画化作品である。余りに名作故に今まで映画化が控えられてきたらしいですが、最新の技術がその実現に追いついたということらしいです。

私は原作を読んでいないのですが、映画としては本当におもしろかった。別に3Dでお客さんを呼ばなくても物語のおもしろさで十分満足させられる出来映えだと思うのですが、今時なので3D作品です。ちなみに私は2D番でみましたがぜんぜん問題なかった。それほどストーリーが楽しめます。

エドガー・ライス・バローズが叔父であるジョン・カーターの弁護士からその遺産を引き継ぐために呼ばれるところから映画が始まり、ジョン・カーターが残した冒険物語をつづった日記を読むという展開でストーリーが語られていきます。

19世紀の末、騎兵隊の嫌われ者ジョン・カーターはふとしたことからある洞窟に逃げ込みそこで謎の人物サーンを殺してしまい、その死の間際にサーンの持っていたメダルでバルスーム(火星)に転送されてしまう。おりしも、バルスームでは滅びを糧にし全宇宙を支配しようとするマタイ・シャンによる陰謀でバルスールは滅亡の危機に陥っている。地球人であるジョン・カーターはその重力の違い故か超人的なジャンプ力と戦闘能力でこの危機を救うべく、プリンセスデジャー・ソリスとともに陰謀に立ち向かっていく。

スペースオペラなので様々な異星の生き物たちや奇怪な姿のエイリアンたちも交える壮大な物語が展開するが、CGにたよらないオーバーラップしていくスピード感あふれるストーリー展開が実に小気味よくて、どんどん物語に引き込まれてしまう。もちろん、ふんだんに使われている3G特撮シーンも見応え十分ですが、ハイジャンプを繰り返して爽快に飛び回り活躍するジョン・カーターのアクションもまた楽しい。

陰謀を阻止する中でサーンと呼ばせて神格化させたマタイ・シャンの謎やここへ転送されてきたメダルの謎が次第に明らかになるという脚本の組立も実に絶妙で、すんなりとこのファンタジーワールドを理解してしまうのです。

何とか陰謀を阻止し、ジョン・カーターはデジャー・ソリスと結婚。初夜に自分の持っていたメダルを捨てたとたん、もぐり込んでいたマタイ・シャンに地球へ強制的に送還されてしまう。切ないクライマックスなのですが、物語がここで終わらないのがまたいい。

ここまで読み終わったバローズはさらにジョン・カーターがサーンの手がかりを捜し求め、その証拠と、メダルを再度手にしたことをかきつづられ、自分の墓所が内側から開かないことの謎を解けと問いかけてくる。そしてバローズはその墓所に行き、NEDがキーワードだと解明、墓所を開くとそこに叔父の姿がない。突然後ろで銃声がし、つけてきたサーンが撃ち殺されジョン・カーターが立っている。

サーンをおびき出してメダルを奪うための策略だとあかした叔父はそのまま墓所に戻り、再び愛妻デジャー・ソリスの待つバルスームへ旅だってエンディングである。

最後の最後まで練り込まれたプロットで飽きさせずしかも爽快かつハッピーエンドで締めくくるという何とも心憎い作り方に拍手したくなりました。本当におもしろかった。
是非、原作を読んでみたいと思いますが、この映画は映画として抜群の出来映えだったと思います。

コーマン帝国
若い映画ファンには知らない人もいるかもしれない、いわずとしれたB級映画の巨匠である。すでに数百本の映画を作り、様々な一流俳優や監督を世に出してきたといわれるほどの才人ながら、常に低予算映画を連発し、賞などには全く縁がない。それでも赤字になった映画が一本もないという、これこそ究極の職人監督です。

アカデミー賞特別功労賞受賞とともに今回彼の軌跡をたどるドキュメンタリーが作られたので見に行きました。

ドキュメンタリーなのでこれというものはありません。次々と彼が作った作品が登場し、関わった俳優や監督がコメントを述べる姿が延々と続いていく。それでも、今だに現役で活躍するロジャー・コーマンを知る上では本当に楽しいひとときでした。

果たして彼の映画をまともに見たのがあるかどうか不安なほどで、テレビの映画劇場でふれた方が多いかもしれませんが、それでも彼の名は映画ファンとしては一般教養みたいなものですから、今回の作品は必見の一本だったと思います。

「キリング・フィールズ 失踪地帯」
マイケル・マン監督の娘アミ・カナーン・マンが演出をした作品で、私の興味はクロエ・グレース・モレッツが出演しているということだけで見に行った一本でした。

宣伝では刑事物のクライムサスペンスのような雰囲気ですが、そういうところはほとんどなく、要するにキリング・フィールドと呼ばれている犯罪無法地帯の姿を映像として表現した作品というイメージでした。従って、二人の刑事マイクとブライアンの人物描写は最小限にとどまっているし、クロエ・グレース・モレッツ扮する少女アンの家庭や彼女のドラマもそれほど重視した描写はなされていません。

映画が始まると、不気味な湿地帯を縫うように回転させたカメラワークでこの映画の舞台を映し出し、次に夜の町で一人たたずむアンの姿を通り過ぎて戻ってくるようなカメラワークでとらえる。そして物語が始まるとマイクとブライアンが取り組んでいる連続少女殺人事件の様子がストーリーの中心になって物語が展開する。とはいえ、特にサスペンスフルに真犯人を追いつめるような組立はなされていないし、マイクの元妻パムとブライアンらの関係も今一つ意味深なままで結局明らかにならない。

アンの母は次々と男を引っ張り込んで、そのたびにアンをじゃまもの扱いにしているようだが、終盤、アンの兄たちがアンを誘拐して殺したということを知って逆上したりもする。

どうしようもない犯罪地帯で、警察さえも踏み込むことをためらうようなキリング・フィールドの姿をひたすらに繰り返し、繰り返し描いていくのがこの作品のメッセージなのだろう。

アンが誘拐され、必死になってブライアンは湿地帯に乗り込むが、簡単に彼女を見つけてしまうし、アンの兄たちに撃たれたかと思われたブライアンはその数ヶ月後のエピローグで無事だとわかり、一人になったアンを引き取るようになるエンディングなのだから、結局、そういうことなのだと理解してしまうのです。

途中で、怪しいと思われた男たちはマイクが執拗に追いつめるけれども逃げられたままだし、アンの家族は終盤で母も兄二人もお互いに撃ち合いになって死んでしまうし、結局、こういうどうしようもない場所が存在しているのだというイメージを見る作品なのだろうと思う。

単純に思い返せば、映画としてはあんまりおもしろくなかった。ただ、クロエ・グレース・モレッツのシリアスな演技を見に行った映画だった。まぁ、これも映画の見方です。損をした気分は全くなかった。