くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「青い果実」「女の坂」「オオカミ少女と黒王子」

kurawan2016-06-06

「青い果実」(1955年岡田茉莉子版)
この時代、この手の主題の作品が結構多い。金持ちの主人公が、貧しい施設を助ける。それを賛美しながら、恋が芽生えるというパターン。しかし、一昔前の演出が妙にノスタルジックで楽しいのがこういう古い映画の楽しみです。監督は青柳信雄である。

東京のはずれらしい小さな町で、地元の青年たちが朝かゆ会なる運動をしている。地元の財閥宝井家の娘の美也子が東京から帰っていて、若者たちの憧れである。

そこに地元の若手女子たちの反発から、東京から帰ってきた医者の青年が絡み、はずれの貧しい保育園を立て直すのに美也子が奔走。やがて医師の青年との恋が成就するというラストシーンへつながる。

特に、秀でた作品ではないものの、なんとも言えないノスタルジーな作品で、ラストの二人のバストショットと希望に輝く顔のカットが寒気がするほど癒されてしまう。でも、この楽しさが映画の醍醐味だと思うのです。こういう楽しさが今の映画にないんですよね。岡田茉莉子は本当に素敵です。


「女の坂」
少々話がくどいので、やたら長く感じてしまうのですが、やはり、吉村公三郎監督の絵作りは美しい。真正面に捉える京都の土塀や屋根瓦など、流石に格調の高さを感じさせる。しかも新藤兼人の脚本の辛辣さ、宮島義男の赤を基調にする美しい映像を見るだけでも、クオリティの高さを感じさせられ楽しみました。

京都の老舗の和菓子屋に、相続のために東京からやってくる現代的な主人公明恵。一時は洋裁学校をするつもりだったが、職人の一人が戻ってきたことから、京都の和菓子に魅了され、作り始めるのが物語の発端。

ある日、母が、知り合いだという男性を連れてきて、しばらく明恵の店に逗留する。実は母のかつての好きだった人らしいという展開から、やがて明恵と恋仲になる下り、一方明恵の友達とのさりげない青春ドラマに、友達の恋と心中事件なども関わってくる。そして明恵は画家の男と深い仲になり、男の妻の家に行こうとするが、洗濯物を見て断念、男とはっきり別れ仕事に慢心する姿でエンディング。

お菓子の店の話が進むかと思えば、画家との恋の話になり、友達との話になり、最後にお菓子の話になるというややストーリー展開がまとまらずくどい。

しかし、明かりやネオン、行灯の光など、カメラ映像が実に多彩で、構図の美しさ、人物配置のうまさなどは流石に吉村公三郎の演出は一級品である。。それを見ただけで、当時の映画のクオリティの高さを堪能できる一本でした。


オオカミ少女と黒王子
どうも最近、こういうたわいもないラブストーリーにうるっと来てしまうようになった。廣木隆一監督作品であるが、それより二階堂ふみを見に行ったのだからいいかと思う映画でした。

とある高校、周りの友達がみんな彼氏がいるので、孤独になりたくなくて彼氏がいるふりをしていた主人公エリカ。写真を見せないといけなくなり、町で一人のイケメンを盗撮したところ、同じ学校のモテ男恭也だったことから、奇妙なラブストーリーが始まる。

ヒットコミックらしいが、脚本が良くないために、今ひとつ物語に流れが出てこない。ロングショットと長回しの連続で見せる廣木隆一監督の演出は、ストーリーに流れを作ろうとしているが、今ひとつ盛り上がらず、演技は二階堂ふみの実力も、わきの門脇麦の存在感も生きてこなかった。

当然、ラストはハッピーエンドが見えているのですが、何か物足りないままだった。でも、これ以下のラブストーリーは山ほどあるので、これだけのカメラワークと演出が見れたのだから、いいとするかな。二階堂ふみも見たし、という一本でした。