くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「虎の尾を踏む男たち」

kurawan2014-11-04

ほぼ30年ほど前に、旅行の帰り、東京の名画座で見て以来のスクリーンでの鑑賞だが、なんとも、これほどの作品だったとは、と再認識した次第である。

カットのつなぎのうまさとテンポの作り方の見事さ、ストーリーの構成のうまさ、そしてラストの処理の見事さ、わずか60分足らずの作品だが、ほとんど無駄なく作られている。本当に黒澤明という人はすごいなと改めて感じいる一本だった。

物語は能の「安宅」と歌舞伎の「勧進帳」の翻案であるが、エノケン扮する強力を付け加えて、ストーリーにリズム感を生み出していく脚本が見事なのである。

エノケンの、ひょうきんな声を繰り返すオープニングから、山伏達が義経一行だと判明する前半、中盤の安宅の関での緊張感あふれるカットの連続と、豪快な演出、エピローグの酒宴のシーンから、一人残されたエノケンが、作意的な絵の夕空をバックに大見得を切って消えていくエンディングまで、ほとんど無駄がない。教科書のような完成度の高さを満喫できる作品でした。すばらしい。