くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「突然炎のごとく」「大人は判ってくれない」

kurawan2015-01-08

突然炎のごとく
フランソワ・トリュフォーの代表作ながら、今回初見。どうもトリュフォーは苦手な監督なのだが、この作品を見ると彼の映像のリズムが判ってくる。その上で、そのリズムに魅力を感じ、彼の映画のおもしろさを理解できたような気がした。作品としてもよかった。

確かに、映画は一人の女性が三人の男の愛情をもてあそぶようなストーリーであるが、ジャンヌ・モローという希代の名優が演じることで映画が映画として嫌みを排除した素直なラブストーリーに仕上げていく。

しかも、音楽センスが抜群によいのか、軽快に走るリズムが、まるでサイレント映画のドタバタ劇のように仕上げていくから楽しい。

主人公カトリーヌ、ジムとジュールの二人の親友と一緒に遊び回るファーストシーンから、やがて、カトリーヌがジュールと結婚し、第一次大戦が起こり、終戦後、カトリーヌはジムと結婚し、いや、一方でジムはパリで女性と結婚し、と揺れ動く恋物語、女心が、ヌーヴェルバーグの即興演出のようなカメラワークで描かれていく。

最後は、ジムとカトリーヌが車で池に飛び込んで死んでしまうのだが、悲壮感よりも、不思議な充実感で映画を見終わることができる。これがトリュフォーの才能なのだろう。
いい映画だった。


「大人は判ってくれない」
いうまでもなくフランソワ・トリュフォーの監督デビュー作だが、なんと今回初めて見たのです。
デビュー作でこの一本というのは、全くフランソワ・トリュフォーの才能にみんな驚いたろうと思う。いうまでもない、ヌーベルバーグの象徴のような傑作である。トリュフォーが苦手だったため、今日まで見ていなかったが、見るべき一本だったと納得の映画でした。

エッフェル塔をビルの隙間から覗きながらのタイトルバック、街並みの捉え方、ラストの延々と走る主人公をカメラが追いかけ長回し、ラストの有名なストップモーションなど、後々の作品のエポックメイキングな役割を果たしたことは確かである。

物語は一人の不良少年アントワーヌ・ドワネルが先生に叱られ立たされるシーンに始まり、彼と彼の悪友の、今となってはたわいないいたずらに近い犯罪ドラマである。

学校を休むために母親が死んだことにしたり、祖母のお金を盗んだり、父の会社のタイプライターを盗んだりを繰り返す。とうとう、業を煮やした両親は彼を少年鑑別所に送る手続きをし、そこでの生活のシーンから、まんまと脱走し、延々と駆け抜けて浜辺に出て、こちらを向いてストップモーションまでが斬新なカメラと、オリジナリティ溢れる音楽の使い方で描かれる。

このスタイルが、この作品以降繰り返し模倣されるので、これがその始まりだというのは、物の本を読まないとわからないくらいだが、やはり、最初にこの映像を創出したフランソワ・トリュフォーは素晴らしい才能があったのだろう。

見るべき一本とはこういう映画も含めるものだと痛感しました。