先日見た「日本のいちばん長い日」とほぼ同時期の、東京のとある一軒の家の物語という感じで、かなり興味津々で見ることはできました。
映画は、雨の日の夜、庭に掘った防空壕が水浸しになるところから始まります。
母と二人で生活する主人公の里子は、近くの役所に努めるが、年頃というのに周りに、結婚相手になるような男性もいなくなっています。
隣に、妻と別居して暮らす市毛という男性が唯一の男。
この設定で、戦争が終盤に向かうひと時の中、明日死ぬかもしれない状況で、隣の市毛に揺れてくる里子の心の葛藤が描かれるのが物語の本編になります。
監督は荒井晴彦。
淡々と進むストーリーで、食糧事情の緊迫感は台詞の中に登場するも、画面にそれほどの悲壮感は描写されない。道端にはひまわりが咲き乱れ、空襲も彼方の出来事のように映し出されます。
ただ、年頃の男が誰もいないという状況が、一人の女性里子には悲壮感として映し出されているようです。
やがて、買い出しに市毛についていった里子は、神社の境内で抱きすくめられ、その夜、市毛に初めて抱かれる。
やがて、終戦前夜、里子は、これから市毛の妻との戦いになると呟いてストップモーションエンディング。
エンドクレジットの背後に里子のつぶやく台詞が延々とつづきます。
不思議な感覚で見終わる映画で、その意味でちょっとした佳作だったのかもしれません。
それにしても、二階堂ふみという女優さんは、台詞の端々、立ち居振る舞い一つ一つのがエロいですね。