くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「DEMONLOVERデーモンラヴァー」「冷たい水」

kurawan2015-11-24

DEMONLOVER デーモンラヴァー」
ストーリーが混沌としていて、確かに流れは掴めるのですが、めまぐるしく変わるカメラワークとアングル、そして人物を捉えるカットに、必死でついていく感じで、慌ただしいほどの映画でした。しかし、ただならぬ感性を垣間見るオリジナリティあふれる映画だったと思います。監督はオリヴィエ・アサイヤス

飛行機の機内で映画が始まる。主人公のディアーヌはゲーム会社ヴァルフグループの社員で、東京アニメとの合弁契約に向かっている。何やら不気味な薬品を水に混ぜ、このプロジェクトのリーダーカレンのものと入れ替える。

実はディアーヌはライバル社のマンガトロニクスの命令で、今回の合弁を阻止するために派遣されたのだ。というのが前半の物語。見事、カレンを追いやり、自分が責任者となるが、マンガトロニクスからせっつかれる中、ことを急いで、アメリカからのエージェントを殺してしまう。ところがそれを、部下の女にビデオに撮られ、実はこの展開にはさらに裏があり、拷問裏サイトのアクセス元を見つけるという計画もあった。いや、実は部下になった女がその運営に関わっているのだった。

深みに入りすぎ、そして、弱みを握られたディアーヌが、最後はその裏サイトの拷問されるキャラクターの一人として捉えられてエンディング。

と、話はこうだと思う。しかし、後半の実は裏があり、ディアーヌが急に無気力になりというあたりからが、よくわかり切れていない。2時間ほどの映画なのに、少し長く感じるのは、ストーリーの構成が、メリハリと筋のまとまりがないせいではないかと思う。いや、この一見なさそうに見える構成が、オリヴィエ・アサイヤスの感性なのだろう。オープニングのポップな音楽と映像から、サスペンスフルな展開の前半、そして、一気に闇が蠢く、ノワールな色合いに染まってくる後半とがちょっとバランスしていないのではないかと思うが、意図した崩しかもしれないな。

解説では、ヴァーチャルな世界に侵入して阻止するという内容になっているから、最後は彼女がヴァーチャルの世界に取り込まれたというエンディングなのだろう。

いずれにせよ、現実とヴァーチャルが入り混じるような映像展開が、かなり難解に見えてしまうのが、独特の個性が光る面白い映画でした。


「冷たい水」
オリヴィエ・アサイヤス監督の感性が光る秀作。青春のどこか危うい空気が、独特のハイスピードなカメラワークと、ふっとリズムを流すような長回しで、見事に描いていく。

高校生のジルとクリスティーヌ。二人は、両親とも学校ともそりが合わない。そのせいかどうか、問題を起こしては、周りを巻き込んでしまう。

レコードの万引きで捕まったクリスティーヌは、両親にも問題があるため、一時病院に預けられるが、抜け出し、森で行われた若者たちのパーティに出かける。一方のジルも、その場に参加し、ドラッグや酒に溺れながら、騒ぐ。

そこで、クリスティーナは、かつての幼馴染のクロエが、南フランスにいるから会いに行きたいから今すぐ旅に出ようとジルを誘う。細かいカットで、若者たちの姿を写すかと思えば、遠景で廃墟の建物を長回しで捉えたり、見事なワーキングで独特のリズムを作り出していきます。

クリスティーヌとジルは、ヒッチハイクをしながら、南フランスへ旅立つ。目的地まであと少しというところで、水辺で二人は過ごすが、クリスティーヌは裸になり、ジルの横に眠る。

夜が明けて、ジルが目覚めると、クリスティーヌの姿はなく、一片の紙が残されていた。暗転。

なんとも言えない感情が画面から伝わってくるのがたまらないラストシーン。青春映画の秀作と取るべきだろう。良い映画でした。