くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「クリムゾン・ピーク」「銀座っ子物語」

kurawan2016-01-13

クリムゾン・ピーク
ギレルモ・デル・トロ監督が描くゴシック・ホラーである。
冬になると赤い粘土質の土が雪原を染めて、まるで真紅の平原のようになるクリムゾン・ピークという自然が覆う土地を舞台にした物語ですが、映像の美しさ、セットの見事さ、詩的な演出の妙味が、やたら前に出てしまって、ストーリーテリングがおざなりになった感じの作品でした。

面白くないわけではないのですが、今となってはよくあるホラーストーリーだし、驚くほどのオリジナリティも感じられない。

確かに、ギレルモ・デル・トロのカメラワークは流麗だし、CGを使った深紅の怪物の登場は不気味なのですが、冒頭から明らかにシャープ姉弟は怪しいし、そのまま中盤から後半、それを証明するだけの物語になっている。

一方の主人公イーディスは、そのことになかなか気がつかないから、世間知らずの阿呆に見えてしまうのです。前半の不気味さから後半のミステリアスへの展開にやや雑さが見られるのは、巨大な屋敷の描写に力が注がれすぎたのではないでしょうか。とはいえ、これほどな格調高いホラーは、やはり、ギレルモ・デル・トロならではと言わないわけにいきません。

主人公イーディスが、血だらけで雪原に立っているシーンに映画が始まり、10歳の時、母の葬儀に幽霊を見たというセリフから始まる。

深紅の幽霊が彼女に、クリムゾン・ピークに気をつけろと囁き、イーディスは大人になる。

イーディスの父親に資金を提供してもらいにイギリスからきたトーマス・シャープは、イーディスを金目的のターゲットにして近ずく。シャープ姉弟は、没落した自分たちの貴族としての家柄と、事業を存続するために、様々な女性を手に入れ資産を奪取しながら生活していたのだ。

前半で、この種明かしがほとんどわかるので、中盤でイーディスの父親が惨殺され、イーディスがトーマスの元に嫁いでイギリスの大邸宅にやってきても、それほどサスペンスフルな面白さを感じられなくなってしまっていた。

確かに、トーマスのお城のような豪邸はすごいし、ハラハラと枯葉の舞い落ちるえ演出や、赤を基調にした色彩、不気味なエレベーターや、廊下、地下室などが、ホラーの常道よろしく画面いっぱいに広がる様は、見る値打ちがある。しかし、いかんせん、ストーリーが先が見えているので、それ以上にならない。

トーマスの姉ルシールはイーディスに毒入りのお茶を与えているし、イーディスの父の主治医アランがことの真相を調べ、イーディスを助けにくるくだりも読めてしまう。

結局、ラストはシャープ姉弟と対決して、無事脱出、冒頭のシーンになってエンディング。
目新しさがないのである。しかも、ストーリーの展開が前半で見えてしまい、それ以上にならないままにラストを迎える。最初にも書いたが、確かに映像美はすばらしいのですが、やはり、映画は物語も面白くないといけないですね。ちょっと、期待しすぎたというところです。


「銀座っ子物語」
これは面白かった。全く知らない映画ですが、本当にテンポがいいし、とにかく始まってからラストシーンまで、楽しくて仕方がない。たわいのない話だし、今となっては古臭いかもしれないし、お金持ちの人たちの甘い恋物語という感じで、ゆるい。でも、映画としてのテンポが抜群に楽しい。

何気なく入る歌のシーンや、ふざけたように取り込まれるバカバカしいエピソード、セリフ、おちゃらけ、何もかもが夢いっぱいなのです。だから、見終わって、ああ楽しかった。と思ってしまう。映画を見に来て、こんな気持ちになれる。これが本当の商業映画だと思います。監督は井上梅次です。

老舗の呉服屋の御曹司三人が朝のランニングをしているシーンから始まり、女遊びに明け暮れる父親で店の主人、そして、三人の息子はそれなりで出来はいいし、二枚目。そんな彼らが一人の女性に恋をする。しかもホテルのオーナーの令嬢ときている。そこに絡んでくる親戚の娘、カフェの女給、などなど、どれもこれもドライで明るい。ジメッとしたものが全くないし、面倒な貧乏くさいお金の物語も出てこない。そして、ドタバタの果てにハッピーエンド。本当に楽しかった。なぜ今こういう映画が作れないのだろうか?そんな疑問だけが頭を持ち上げてくる、そんな掘り出し物の一本でした。