くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「オデッセイ」「猫なんかよんでもこない」「タイム・トゥ・

kurawan2016-02-08

「オデッセイ」
面白い映画ですが、ちょっと、いろんな点で期待しすぎたというか、結構普通の商業作品という色合いのある映画だったかなという感じです。監督はリドリー・スコット

火星で調査をするアメリカのクルーたちのシーンから始まる。突然砂嵐が襲ってきて、予測以上の規模だったために、脱出ポッドが倒れる危険があることから、緊急で飛び立つことになる。主人公のワトニーたちは、研究のための施設から出て、ポッドに向かうが、途中、ワトニーは風で飛ばされてきた機材と衝突、飛ばされ、宇宙服に傷がついてしまう。ワトニーが死亡したと判断した船長たちはポッドを飛び立たす。

ところが、間一髪でワトニーは助かっていた。そして一人、施設に戻り、冷静に生き延びる術を計算し始める。一方地球では、ワトニーの英雄としての演説が行われていたが、衛星が火星上の何かの動きを見つける。そして、それがワトニーだと確信する。

一方ワトニーも、植物学者という知識を駆使して、菜園を作り食料を育て始める。そして、かつて火星探査に送り込まれた装置を掘り起こし、地球との交信を試みる。次々とアイデアを駆使して、サバイバル劇を演じていくワトニーの不屈の行動がとにかく面白い。出てくる専門用語は全く意味不明なところが多いが、それがかえって、娯楽性を生み出している気もします。

こうして、地球側もワトニーとの交信を開始、直ちに救出計画が立てられるが、火星では事故で、菜園が消失、食糧補給を緊急にし救出しないといけなくなる。そこで、帰途上にあったワトニーたちのクルーが乗った宇宙船を再度火星に戻し、ワトニーを救出するという一か八かの計画が始まる。そこに、アメリカの打ち上げロケットが失敗し、中国が極秘に進めていたブースターを利用するというエピソードも挿入され、明らかに、中国の映画市場を意識したストーリーになるあたりからどうにも辟易としてくる。

確かに、リドリー・スコットのシャープな映像演出は面白いし、ワトニーのサバイバル劇をモダンな音楽で彩り、次々と出てくる専門用語の説明は吹っ飛ばして、どんどん先に進める脚本も秀逸。そして、シンプルな物語を丁寧な人間ドラマとして仕上げたクオリティはなかなかのものである。しかし、あえて、中国の技術でアメリカが助かるという取って付けたようなエピソードが加えられたのが妙に気になる。まぁ、ここに目をつぶれば、シンプルでモダンな人間ドラマとして面白かった。


「猫なんかよんでもこない」
もう少しつまらない映画かと思っていましたが、意外と普通の映画でした。まぁ、犬派の私が猫を飼いたくなるのですから、映画としては、できていたのでしょう。監督は山本透です。

漫画家の兄貴と同居しているプロボクサーのミツオ。ある日、兄貴が捨て猫を二匹拾ってくるところから物語は始まる。もともと犬派のミツオだが、兄に言われるままに猫の世話をする。

ミツオはようやくボクシングの試合で勝ちA級ライセンスになるが、目を故障し、ボクシングを断念、一方兄は、漫画家をやめ、彼女と結婚して田舎に帰る。猫と暮らすことになったミツオは、ふと、漫画家になることを思いつき、猫と暮らしながら、コンクールに応募。

やがて、二匹のうち一匹が病気で死に、どん底から抜け出したミツオは猫の漫画を描いて入選した知らせでエンディング。いわゆる原作者の自伝的なドラマで、猫の愛くるしいシーンとミツオとの掛け合いの日々がほのぼの描かれる。

時折、大胆なカメラワークを見せたり、ちょっと技巧的なところもあり、映像としても楽しめた。まぁ、普通の映画ですが、損をしたとは思うことはなかったから、良かったかな。


「タイム・トゥ・ラン」
友達の口コミで面白いというので出かけた。監督はスコット・マン。なるほど、相当練りこまれた脚本の面白さで、二転三転するエンディングと、にんまりする粋なラストは絶品の一本でした。

夜の街、一台のバスが走っている。カットが変わると、誰かに追われている風の男たち、続いてバスが止まり、妊婦らしい女が乗ってくるが、磁気カードのエラーでもたついている。やっとバスが動き出した途端、先ほど追われていた男たちが、無理やりバスに乗りバスジャックする。そして時は一週間前に戻る。ちょっと編集は荒いが、なかなかのオープニングである。

何やら、捕まった男女が金のありかを聞かれ脅されている。そこへ、カジノを牛耳るボスのポープが現れ、結局二人を殺す。このカジノに努める古株のディーラーヴォーンには、病気の娘がいて、この金曜までに病院に金を払い、手術を受けさせないといけないが、ボスのポープに頼むも断られ、挙句に暴れたヴォーンを解雇する。

そんな彼に、コックスという男が、ポープの金を奪おうと計画を持ち込む。

こうして、コックスが連れてきた男が二人とヴォーンが計画を実行、金を奪うが、逃走車担当の男が逃げてしまい、仕方なくヴォーンたちは走って逃げ、たまたまやってきたバスに乗り込んで冒頭のシーンになる。このバスのそばに、たまたまパトロールしていた女巡査がバスを追いかけ始める。こうして、警察とヴォーンたちの追走劇が始まる。

ここからは、いかにもありきたりなのだが、女巡査に味方する刑事が、実はポープの仲間で、バス内で怪我をしたヴォーンの仲間に点滴を届けに行き、まんまと殺してしまったりする。この辺り、確かに面白いが、かなり雑なエピソードだと思ってしまう。

そして、SWATは最後の手段に出て、バスに総攻撃、タイヤを破裂させ、停止させるが、慌てたコックスは、バス運転手を殺そうとし、ヴォーンはコックスを撃ち殺す。しかし、外部はその真実がわからないまま、運転手の提案で、バスのタイヤを治せば人質を一人残し全員解放することになる。そして解放するのだが、実は、解放した人質の中にヴォーンが混じっていて、そのまま、コックスが用意した民間飛行場へ向かう。しかし、そこではポープが待っている。ポープの腹心が、ヴォーンを焼き殺そうとするが、逆にポープに撃たれる。さらに、ヴォーンが持っていたカバンに金はなく、実は冒頭でバスに乗ってきた妊婦はヴォーンの仲間で、お腹に金を入れて、まんまと脱出、病院に金を届けたのだ。

ポープはというと、末期癌で、ヴォーンを解放した後、一人タバコを吸う。病院では、期限の金曜までに金が届けられ、無事手術となるし、その真相を知った女巡査も見て見ぬ振りをするし、人質になった乗客たちも、ヴォーンが善人とわかり、犯人は二人だけだったとかばう。こうして映画はエンディングを迎える。

まさに二転三転乗ってラストと、伏線の数々、脚本家のしてやったりが見えてくるような映画だった。ポープのラストの一服も粋だし、女巡査の最後の手段に苦笑いも見事、ここまで練りこまれると面白くなかったとは言えない。ちょっとした一本でした。面白かった。