くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ちはやふる〜上の句〜」「ロブスター」

kurawan2016-03-23

ちはやふる〜上の句〜」
この手のコミックの映画版はほとんどハズレなので、半信半疑で見に行った。まぁ、広瀬すずを観れればいい程度だったのですが、これがなんとも楽しいし面白い。とにかくテンポがいい。ハイスピードでエピソードが積み重ねられていって、クライマックスの東京都大会で優勝するまでが実に小気味良いのである。この手の作品の前半部分としては成功していたとおもいます。監督は小泉徳宏です。

舞台となる高校にやってくる主人公の千早が競技かるた部を作ろうと奔走する場面から映画が始まる。廊下を駆け抜け、チラシを配り、ポスターを貼る。この導入にかぶってくるのが主要な登場人物となる太一、新、湊たち。こうして登場人物が揃ったところで、競技かるたについての説明をさらりとやり、そのまま、稽古と大会の場面へ流れる。この辺りの脚本の処理はうまい。

その間に、千早、新、太一の幼い日々の話が挿入され、クライマックスの大会優勝の流れの中で、太一の千早への想い、新の気持ちが挿入して、青春の甘酸っぱさを漂わせて前半が終わる。

後半は、おそらく、全国大会で千早たちが新を迎え入れる流れになっていくのだろうが、前半の中盤でおそらく新が競技大会に行ったために祖父が亡くなったのだろうという空気を匂わせ、かるたはやらないと太一に答える新の電話の言葉も後半につながっていくのだろう。

しかし、前半部分は実にリズム感溢れる展開で進めたが、ここで描いた様々なエピソードを後半で一気にまとめ上げてエンディングに繋がないといけない。そう考えると、後半が相当長いものになる気もするし、逆にそれができないとなった時にどうストーリーの構成を組み立てるのかが課題になるように思う。

でも、とにかく広瀬すずがいい。眼力というか、セリフを語るときの視線の迫力、円形で捉えていても見せる視線の演技が抜群で、ただ可愛いだけの女優ではない大きさを感じる。彼女が牽引して、周りがついて行く中で生き生きしてきたというのがこの前半部分の面白さだろうかと思います。面白かったです。


「ロブスター」
大入り満員で、昨日来たが入れなかった作品を今日は見ました。
なんで、混むのかわからない不思議な映画です。これを面白いと思えるなら、大抵の映画は面白いと思えるのではないでしょうか。監督はコルゴス・ランティモスという人です。

時は近未来、独身でいることは罪であり、45日以内にパートナーを見つけないと動物にされてしまう。主人公デイビッドは独り身になったので、パートナーを見つけるためにホテルへ行くことになる。兄は、パートナーを見つけられず犬になっている。なんとも不可思議な導入部で、当たり前のように人を殺したり殴ったり罵倒したりする。

ホテルでは、鼻血がやたらでる女や、妙な世界が展開。しかも会話もどこかシュールに繰り返される。なんとかパートナーを見つけたが、犬の兄を蹴り殺したので、殺してしまう。そして、職員の手助けで、脱走し、独身だけが住む森へ。そこには女のリーダーがいた。

そこで、恋に落ちるのだが、それを許せないリーダーは相手の女の視力を奪う。怒ったディビッドはリーダーを殺し、恋人と街に行く。そこのレストランで、ディビッドも恋人と同じ盲人になるため、ナイフを持ってトイレに行く。そして、自分の目をつこうとするが、なかなかできない。一人待つ恋人のショットで暗転エンディング。ディビッドは成功したのか逃げたのか、それはわからない。

いずれにせよ、不思議な映画である。SFという形なのでなんでもありなのだが、どこか感情が全く見えないドラマで、恋愛を扱っているのに胸に迫るものはない。感情をなくした近未来の物語のようで、ものすごく殺伐と見える。妙な一本でした。