くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「太陽は動かない」

「太陽は動かない」

それほど期待していなかったのですが、その通りだったというのはそれはそれで寂しい。アクション映画だと思って見ているとそのテンポの悪さに辟易とするが、人間ドラマだと見るとそれなりに監督の羽住英一郎の力量が発揮されていると思います。主人公の少年時代の場面をやたら挿入してくる前半部分がアクションシーンのキレを潰していくのですが、アクションを描くのではなくドラマを描きたいという意図なら正解でしょう。ただ、謎の美しい日本人の女性役に韓国女優を使ったのはさすがにいただけません。この一点でこの映画は星一つ評価です。

 

24時間に一度本部に連絡を入れないと胸に埋め込まれたチップが爆発するという、企業情報を盗んでは利益を上げている謎の組織AN通信の説明から映画は幕を開ける。そもそもネットドラマとのコラボらしいからこれもありでしょう。一人のエージェント山下が何者かに追われる展開になったところで、鷹野というエージェントが駆けつけ助け出す。本部への連絡を必死でしようとする山下だが、敵との乱闘の中なかなか進まず、最後の最後爆発して死んでしまう。山下が追っていた情報とはなんなのか、その謎を鷹野とその相棒田岡が探るのが本編となる。

 

二人に執拗に近づいてくるのがライバルのディビッド・キムというエージェント。物語は、山下が追っていた情報が、太陽エネルギーにまつわるもので、さらに海外にいる太陽光発電の画期的な蓄電システムを開発した小田部教授から情報を引き出すこと、さらにインドでとある少年が発見したエネルギー送電システムの情報などが絡んで、香港のアンディ・黄ら巨大組織や日本の電気メーカーなども絡んでの三つ巴四つ巴の情報戦とアクションの連続になる。一方で鷹野の少年時代の詩織という少女との初恋の思い出や、親友柳との青春の日々などが挿入されていく。

 

虐待されその直前のところを助けられた四歳の頃の鷹野は、やがて風間の指示のもと育てられ、AN通信という組織のエージェントとなる。風間の語る鷹野の物語が後半のきかせどころとなり、一方、一旦はディビッドに情報を売る決心をしていた小田部は、娘を誘拐され、さらに謎の日本人AYAKOの茶々入れもあって、二転三転転がっていく。結局、鷹野達が小田部を助け、海に投げ出されたところへ何者かに依頼されたディビッドがヘリコプターで駆けつけ、映画はクライマックスへ。

 

デビッドは、鷹野と柳が少年時代に交わしたエピソードの会話を鷹野に告げて暗に柳の存在を匂わせる。一方、小田部教授の理論を使ったプロジェクトは完成に向かうがインドの少年の発明の権利はAYAKOが手にしていたり、ディビッドの本当の狙いはアンディ・黄を失脚させることだったりと謎が明らかになっていって映画は終わっていく。

 

タンカー内に拉致された小田部教授を助けに行った鷹野が、海からどうやって脱出するかを考えていない雑さはさすがに残念ですが、そつのない娯楽映画に仕上がってはいたと思います。