「幸せをつかむ歌」
メリル・ストリープが生で歌ったのが話題になったドラマで、監督はジョナサン・デミである。正直、普通の映画である。アカデミー賞監督と女優が主演を務めている割には普通の映画なのです。しかもストーリー構成がいまひとつで、結局、メリル・ストリープが実娘メイミー・ガマーを映画出演させ、歌いたかったのかなという感じの作品でした。
小さなライブハウスでロックバンド、ザ・フラッシュを率いて歌っているリッキーの姿から映画が始まる。ロックのために娘たちを捨てて離婚し、音楽一筋に来たものの、これというほどの大成功はしていないで貧乏暮らしである。
そんな彼女に元夫から電話が入り、娘のジュリーが離婚をして落ち込んでいると知らせてくる。やはり自分の娘ということできになるリッキーは本名リンダに戻って、元夫の家に帰ってくる。そこで娘のジュリーをなんとか立ち直らせるのだが、息子が近々結婚するという話を聞く。このくだりが実に適当で、さらっと普通に解決して、再び歌うために去っていく。
その後、息子の結婚式の案内が来て、悩んだ末に、バンドの仲間と駆けつけ、お祝いの席で熱唱してエンディング。って、この程度かなという映画である。
ドラマ部分もしっかり描けているわけでもなく、と言ってミュージックシーンもありきたり、カメラも普通で、本当に、娘を出したかっただけのメリス・ストリープのワンマン映画という感じである。
「僕だけがいない街」
原作を知らないのですが、物語は普通に面白かったです。ただ、1986年の子供時代と2006年のメインシーンとのバランスがちょっと違うような気がして、ラストが引き立たなかったのはちょっともったいなかったですね。監督は平川雄一郎です。
ピザ配達のバイトをしている主人公藤沼悟のシーンから映画が始まる。そしていきなりのトラック事故のシーンで、彼の持つリバイバルという体験を先に説明、ストーリーが本編に流れていく。この導入部はうまい。
この後、愛梨が登場し、母親の佐知子が登場し、彼女が殺されることで物語が確信に飛び込んでいく。この展開は実にうまい。これに卓越した映像演出が加われば傑作になったろうにと思いますが、平川雄一郎監督は、そういうのに凝る人ではないので、ここはそのまま過去にリバイバルして、悟のクラスメートが殺される連続幼児誘拐殺害事件へと展開、物語の中心が子供達になる。ここからの展開がややテンポにかける。せっかく藤原竜也を配置したのならもう少し効果的に演技してもらうべきだろう。もったいない。愛梨を演じた有村架純は今回、色を添えただけになっているので、これはこれでいいと思うのですが。
そして、少年時代の悟が、雛月加代を助けるためにリバイバルを繰り返し、真相に近づいていく。ここで、冤罪で捕まった白鳥がほんの少し絡むだけで、後半完全に消えるのは脚本の弱さであろうかと思います。
この辺りで真犯人は八代先生だろうと薄々見えてくるのですが、この隠し方がちょっと雑なのが残念。実は愛梨かなとか、もう少しはぐらかす伏線が欲しかった。無難にかわしすぎた演出はいただけない。
結局、雛月は助かったが、犯人はまだ生きていて、前半で愛梨が入った店に来る西原という客がどうのというセリフのが生きてきて、八代先生は西原という名前になっていた、最後に悟と対決して、誤って悟は致命傷を負いながらも犯人逮捕される。
そして、2016年、悟の墓参りに集まるクラスメートたちの姿でエンディング。
こうして、思い出してみると穴だらけの脚本だった気がするが、見ているときはそれなりに楽しめたのだから、原作の味を壊さない程度の無難な娯楽映画というところでは成功してると思います。まぁ、面白かったです。