くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「マネーモンスター」「サウスポー」「シマウマ」

kurawan2016-06-10

マネーモンスター
傑作でもなんでもないのですが、抜群に面白いです。始まってからいきなり本編に飛び込むまでが、鮮やかで無駄なことをしていない。後はもラストまで突っ走る。緩急のリズムが物足りないとか、犯人のキャラクターが薄っぺらいので、作品が平坦に見えるけど、素直に最後まで楽しめました。監督はジョディ・フォスターです。

人気番組「マネーモンスター」のオンエア直前から映画が始まる。お金の投資をバラエティ番組のようにパフォーマンス満載で取り上げるこの番組は、今や大人気。そのメインキャスターリー・ゲイツも人気者である。妻はこの番組のディレクターパティ・フェンである。

今日も番組がスタートしたが、怪しい人物がスタジオに潜入した。そして突然、銃を持ち出しゲイツに爆弾付きのベストを着せて立てこもる。彼はある会社の株を買って大損をしたという。彼の名前はカイル。ゲイツたちは巧みに彼と会話し、真の目的を探ろうとするが、その中で、実は、彼が関わった株の会社こそが悪であることが見えてくる。

結局、詐欺を働き膨大な金を抜き取った会社のCEOが影の悪人とわかるが、その陰謀を暴いたものの、カイルは射殺されてしまう。人々は何事もなかったかのように日常に戻り、株価もそれほどの変動も起こらなかった。

面白いのだが、爽快なほどの謎解きの面白さが少し足りないので、サスペンスとしては一級品になりきっていない。もう一捻りふた捻り脚本が練られていたら、かなり面白い作品になったかもしれないが、カイルのキャラクターも薄っぺらいのし、フェンたち放送局側の巧みさも今ひとつ迫真性がないので、作品全体は、普通に仕上がった感じです。でも、面白かったことは事実なので楽しめました。


「サウスポー」
典型的なボクシング映画で、安心して見ていられるといえばそれまでですが、ありきたりといえばそれまでです。まぁ、退屈はしません。監督はアントワン・フークワです。
これから試合というボクシングの控え室から映画が始まる。控えているのはビル・ホープ。試合中、キレてくると突然強くなるというタイプの試合で、負け知らずである。今日のその凶暴なボクシングで相手を倒す。傍には愛妻モーリーンがいた。

ところが、施設の講演に呼ばれたビルは、そこでミゲルという男に挑発され、殴り合いになった拍子に、モーリーンがピストルの流れ弾で死んでしまう。

愛妻を亡くしたビルは自暴自棄になり、次の試合では完敗
審判に暴力を振るい、引退に追い込まれる。娘のレイラとも引き離され失意に落ちていく。しかし、彼は立ち直るべく、一人のトレーナーの元を訪れる。その男ティックは唯一ビルを倒した選手を育てた男だった。

後は、常道の流れで、立ち直ったビルはミゲルを判定で下し、チャンピオンに返り咲き、レイラと抱き合ってエンディング。普通に感動を呼ぶ一本である。

アントワン・フークワ監督の試合演出は、ひたすらパンチの音を強調し、一人称カメラを多用し緊張感を生み出す。様々なボクシングシーンの演出があるが、これもまた独特のものかもしれない。

妻のモーリーンが前半三分の一で消えてしまうし、ティックのジムの少年が死んでしまうエピソードなど、脇の話を挿入している割に、人物それぞれに膨らみが見られないのが残念。

ティックを演じたフォレスト・ウィッテガーが好きなので、見ていられるが、それ以外は本当に普通の映画である。でも、退屈はしませんでした。



「シマウマ」
ひたすらバイオレンスシーンと絶望感の中で展開する作品。その徹底ぶりと、これというメッセージも、核になる話も見えない映画でしたが、ミニシアターで見るならこういう徹底したものを見るのが一つの醍醐味かもしれません。監督は橋本一です。

開巻、背中にハリネズミのように矢を刺された男の姿と、それを見下ろす数人の男。その映像を見る主人公竜夫。そしてガールフレンドらしい女に逃げるように電話をして走り出す。男たちが女を連れ出し車に乗せるシーンが続いて、竜夫が飛び込み女を助けようとしたら、実は男で、反撃された気を失う。

時間が少し戻り、美人局で荒稼ぎしていた竜夫たちは、ある日、ヤクザの男をカモにその報復で、シマウマと呼ばれる復讐集団に狙われたのだ。

竜夫が気がつくと、猟奇的なアカという男たち。竜夫も縛られ半殺しされそうになるが、背中の傷を見てアカが止まり、助ける。実はアカはこの竜夫に学生時代助けられたことがある。

実はこのアカというのは、人の恨みを金で請負、半殺しの目に合わせる仕事をしている。要するに必殺シリーズの現代版バイオレンスバージョンである。

あとは、次々とターゲットが出てきて、竜夫もドラという名前でこの仕事を始める。原作がコミックなので、幾つかのエピソードを盛り込んだ展開になる。ただ全編流血シーン、バイオレンスシーン。胸が悪くなるほど続くのが辟易としてくるし、だらだらと流れてくるように見えてくる。

結局、一時は半殺しされたドラも何故か快復、これからまた仕事を続けるという感じでエンディング。

見ごたえがあるとか、ここがすごいとかはないのですが、全体に若々しいほどにエネルギッシュである。ベテラン橋本一の作品だと思うと、ちょっと見ごたえを感じてしまった。こういう奔放さをまだまだ持っていたのかなと感心する映画でした。