くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「BLUE ブルー」「パーム・スプリングス」「レッド・スネイク」

「BLUE ブルー」

特にキレのある演出でもなく、淡々と描いていく空気感が、かえって映画自体をとっても魅力のあるものに変えていく。ボクシング映画なので、それなりの熱さを期待するにだが、この映画はそこを目指すのではなくて、あまりにも普通の日常的な空気感で描いていくために、三人の青年のほんのひとときの青春がくっきりと浮かび上がるのです。傑作とかそういうわけではなく、見ていてとっても良い感じを体験できる一本でした。監督は吉田恵輔

 

一人のボクサー瓜田がこれから試合という場から映画は始まる。友人で、ボクシングの才能がある小川がさりげなく瓜田のテーピングをする。そして物語は少し遡る。瓜田は何度試合をしても負け続きなのだが、彼が誘った小川はみるみる才能を見せて、まもなくタイトルマッチが見える位置にいた。しかし、小川は、脳への衝撃から、脳に障害が出始めていて、時々、物忘れしたり頭痛、平衡感覚の乱れなどがあった。小川の恋人で、かつては瓜田の彼女だった千佳は、瓜田を通じて小川に検査を勧めさせる。そして、ボクシングを続けることは厳しいという診断が出るが小川は辞めることがなかった。

 

そんな時、職場でいい格好をしたいために瓜田らがいるジムに楢崎という青年がやってくる。格好だけできればいいという楢崎に瓜田は真面目に教えていく。やがて、ボクシングの魅力に惹かれ始めた楢崎は、本気で練習を始め、やがてプロテストに合格する。一方、小川はチャンピオンタイトルマッチの試合が決まる。

 

やがて、試合の日、瓜田は、デビュー戦だというロートルのボクサーに負けてしまう。しかしそのボクサーはキックボクシング経験のあるベテランだった。一方小川は、タイトルマッチに勝ち、ついにチャンピオンになる。楢崎もプロデビュー戦に出るが、無様に負けてしまい落ち込んでしまう。

 

祝宴の席でクダを巻く楢崎を癒す瓜田、帰り道、瓜田は小川に、本当はずっと負けて欲しかったとつぶやく。そして瓜田は引退する。楢崎は瓜田の挽回戦で、瓜田を倒したボクサーとの試合を無理やり決めてもらう。そんな楢崎に瓜田は自分の試合経験とアドバイスを書いたノートを渡す。

 

やがて、試合、楢崎は善戦するも結局判定負けしてしまう。一方の小川の試合は、勝利一歩手前で怪我によりレフリーストップがかかる。小川と千佳は結婚し、楢崎は相変わらずジムに通う。

 

引退した小川だが、やはりボクシングへの想いは忘れられず、また朝のランニングをする。そこへ楢崎も加わる。瓜田は市場で働いていた。ふとした時にボクシングを思い出し、シャドウボクシングを始めて映画は終わっていく。これという劇的な物語はないし、小川の病気は結局どうなったのかという脚本も気になる。三人の物語に千佳が絡むという展開は面白いのですが、もう一歩物足りなさというか描ききれない弱さも見えなくもない映画でしたが、見ていて感じいるものが見える映画でした。

 

「パーム・スプリングス」

お話はファンタジックでロマンティックを目指したのでしょうが、どこか物語の整理ができていないのか、納めどころが見えなくなってきて、無理矢理感が終盤が見えてきたのがなんとも残念。面白いの一歩手前という出来栄えのラブコメでした。監督はマックス・バーバコウ。

 

ヤギがいる山に突然地震が起こって地割れがして、そんな夢を見たナイルズがベッドで目を覚まして映画が始まる。傍に恋人のミスティがいるが、なんともいけすかない女である。この日、友人の結婚式にやってきたのだ。パーティの席で新婦の姉サラに惹かれたナイルズは猛烈にアタックし、あわや体を合わせるかというところで突然現れたロイという男にナイルズはボーガンで矢を射られる。なんのことかわからないサラだが、何やら洞窟の方に逃げるナイルズを追っていくと、突然ベッドで目を覚ます。なんと時間が遡り結婚式の朝に戻っていた。

 

サラはナイルズに詰め寄るが、ナイルズはもう何回もこのタイムループを繰り返しているのだという。ナイルズを殺しに来るのがロイなのだ。しかも、サラが洞窟へついてきたので二人でタイムループをする羽目になる。こうして死んでは元の朝に戻るを繰り返しながら、次第にそれを楽しみ始めるが、サラはこのタイムループからぬけだしたいと考えはじめる。そして、車を運転していてついてきた警官の車に乗っていたロイを轢き殺す。

 

ベッドで目を覚ましたナイルズはサラがいないことに気がつく。どこを探してもサラは見つからない。そんな頃、ナイルズとは別に目覚めたサラは、タイムループから抜け出す方法をオンライン授業で勉強し始める。何度も何度も時間を繰り返しながら勉強し、ついにその方法を発見し、ヤギでテストをする。

 

そして、ナイルズの前に現れたサラは、タイムループを抜け出そうと提案する。それは洞窟に入って一定のタイミングで爆死すればいいのだという。今の毎日で構わないというナイルズに、サラは一人洞窟へむかう。しかし、サラを愛していたことを知ったナイルズはサラを追いかけ、二人で洞窟へ入っていき爆死する。

 

冒頭シーンよろしくプールで浮かぶ二人のショットから、結婚式、そしてパーティへとすすむ。その席に現れたロイがナイルズに話しかけるが、ナイルズはロイのことは覚えていなかった。こうして無事タイムループを抜け出して映画は終わっていく。

 

コメディ部分の展開が少し弱い上に、ナイルズとサラが本気で惹かれ合う流れがもう少し見えたら、ラストは感動したところです。ビッチのミスティなど脇役をもう少し面白く描けば主役が引き立ったのに、結局、ロイの描写も、子供ができて平和に暮らす場面のみで後は謎のまま。あえて省略したのかもしれないが、描くべきは描いたらもっと面白くなったように思います。

 

「レッド・スネイク」

これはなかなかクオリティの高い見応えのある映画でした。アラブ諸国の宗教的なことや民族間の諍いは何度見ても理解できませんが、それを差し置いても、ストーリーテリングがしっかりしていて、実話とはいえ、引き込まれる映像作品でした。監督はカロリーヌ・フレスト。

 

真っ赤な花のクローズアップから広がる緑の草原、仲睦まじく遊ぶ少年少女たちの場面から映画が幕を開けます。このオープニングが実に上手い。そして、わずかな兵士に守られたヤジディ教徒の村の場面に移る。平和に暮らすザラらの家族の場面から、やがて村を守っていた兵士が去り、ISの兵士たちが村を襲う。ザラの父は射殺され、ザラらも拉致されていく。そして、弟と引き離されたザラは、ISの指揮官に買われていく。ザラは、外に出るチャンスを使って携帯を手に入れ、助けを求める。そして村はずれまで来た男の車で脱出するが、途中、難民たちを襲うISの車らと遭遇。ところがそこにクルド人を支援する連合軍の中にある女性のみの特殊部隊 蛇の旅団 が現れ、難民を助ける。

 

難民キャンプにきたザラは弟を探すために蛇の旅団に志願する。そして、とある村でISと戦闘をした蛇の旅団は、そこでかつてザラを買ったISの指揮官を拉致することに成功し、ISの指導者の居場所を突き止めるが、ザラの弟は洗脳されて体に爆弾を巻きつけられていた。蛇の旅団は巧みに変装して連合軍とISの本拠地へ突入、蛇の旅団のメンバーも飛翔しながらも指導者を追い詰めていく。しかし、洗脳されたザラの弟が目の前にいた。ザラは必死で弟の心を呼び戻し、無事救出、指導者も倒してしまう。

 

映画は戦勝祝いに歓喜する人々の場面で終わっていくが、ダイナミックなカメラワークと真上から捉えるショットを巧みに組み合わせた娯楽性の高い演出を施しながら、民族の争いや宗教問題をしっかりと描いた演出はなかなか見応えがあります。蛇の旅団の訓練シーンや新兵がやってくるエピソードなど、必要かと疑われる部分もあり、傑作とはいえないかもしれませんが、なかなかの作品だったと思います。