くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「シン・ゴジラ」「好きにならずにいられない」

kurawan2016-07-29

シン・ゴジラ
圧倒される。とにかく日本映画界が総力をあげたというのはこのことだろう。第一線で活躍中の俳優を総動員し、さらに、特撮スタッフを総動員して完成させた満身のゴジラ映画、それがこの「シン・ゴジラ」である。監督は樋口真嗣であるが、特撮パートCGパートなどそれぞれに監督を配置し、総監督として庵野秀明が担当して取りまとめている。脚本は庵野秀明である。

何と言っても、その導入部から一気にゴジラらしいものを登場させ、細かいカットとカメラの切り返しで画面に釘付けにしてしまいラストまで引っ張るのは半端ではない。しかも会話それぞれがいかにもな難しい単語の連続で、それを理解する以上に、映像のスピードに酔ってしまうのだ。

一隻のトレジャーボートが無人で発見されるところから映画がはじまる。続いて、東京湾で謎の水蒸気が上がり、トンネルが陥没する。最初は海底火山か何かと考えた政府側だが、ネットにアップされた映像等より何かの生物と判明、さらに巨大な尻尾が現れて決定的になる。とにかくここまでが早い。

この手の物語の常道として、後手後手に回る政府と、それに真っ向から対峙する主人公たちという構図がこの作品にも取られるのだが、そこに、無駄なもたもたを置かない。物語は次々と進展し、巨大生物の上陸から、異常な進化をして みるみるゴジラに変貌していく様がとにかく早い。しかも、それに対処する政府や東京都の対応も、的確というより、あれよあれよと決断を迫られ、次の流れになっていく。

酌み交わされる化学用語や政治用語が実に煩雑であるが、徹底した滑舌のリズムでテンポよく展開するさまは演出の力量というべきだろう。

やがて、一旦は東京湾に消えた生物は、次はその2倍の化け物のようなゴジラになって登場、東京に上陸。自衛隊の兵器を総動員しての攻撃が功をそうしない中、とうとう米軍の援助を求める。しかし、米軍の攻撃もむなしく、ゴジラの圧倒的な強さ、というか強すぎる反撃に打つ手がなくなる。

一方日本の化学チームはゴジラを凍結させてしまう作戦を進める。ところが海外は、核兵器の使用による、ゴジラ壊滅を計画し国連がそれに同意するのだ。

身体中から強力な熱戦を放った後、ゴジラは一旦は休眠状態になる。核兵器使用のカウントダウンが始まる。凍結作戦の準備との時間競争がクライマックスになり、最後は間一髪でゴジラを凍結させて固まらせエンディング。

長谷川博己扮する官房副長官が実質の主人公のような流れであるが、脇役に配置された役者それぞれが一丸となって、日本という国を背負ってゴジラと戦うという構図であるから、とにかく、圧倒されるのだ。

自衛隊の総攻撃シーンも、これほどまで日本にも火器があるものかと圧倒されるが、米軍の爆撃で一気にゴジラにダメージを与えるくだりも、さすがに凄い。ラストのゴジラ退治シーンは、ここまでがゆっくりときたらかなりちゃちに思えるのだが、ここまでの展開がめまぐるしいほどにスピーディなので、ゴリ押しで納得させられてしまう。この脚本の構成が実にうまい。

とにかく、異常なほどに強すぎるゴジラと手も足も出ない日本国家という構図から、背水の陣で逆転で勝つ構図はある意味壮観。エンドクレジットが流れたらそのキャストスタッフに開いた口がふさがらないまま、最後は拍手したくなってしまいました。こういう作り方もありでしょうね。思わず限定のゴジラフィギアと缶バッチ買ってしまいました。


「好きにならずにいられない」
いい映画ですが、最後まで主人公に入り込めなかった。監督はダーグル・カウリである。

巨体というほどに太った主人公フーシの唯一の楽しみは、ジオラマで戦場のシーンを作ったり、ラジコンで遊んだりすること。独身で43歳、職場では同僚にからかわれ、飛行機にも乗ったことがない。見かねた母親が誕生日にダンス教室のチケットをプレゼントする。

近所にいる少女に妙にすかれてあそんだりするのだが、これが逆におかしな目で見られたりもしている彼だが、ダンス教室に出かけたものの中に入れず車で躊躇しているところへ一人の女性シェヴンが飛び込んでくる。

根っから明るい感じの彼女に惹かれたフーシだが、彼女は極度の躁鬱で、うつに入ると家も出られず、会社もいけないのだ。出会ってすぐに、一緒にエジプトに行こうと話したり、店を持つのが夢だと話したりする。 そんな彼女を支えるフーシ。シェヴンは彼に、一緒に住みたいという。ところが荷物をまとめてフーシが言ってみると、突然彼女は拒否する。

そんな彼女の心を察し、フーシは彼女の夢である店を購入してやり、鍵をドアから滑り込ませ、一人エジプトに旅立ちエンディング。

ストーリーの流れはわかるのですが、何事にも柳のように受け流すフーシの姿は時々鬱陶しくなってくる。これをピュアでいい人なのだという描写と受け取れば映画に入り込めるのですが、どうも、やりきれないほどの素朴さが耐えられないほどに辛くなってきて、せめてラストがもっと明るくハッピーエンドならとおもうのですが、それもどこか霧に包んだエンディング。いい映画だと思うけど、私は好みではないです。