くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「疾風ロンド」

kurawan2016-11-26

「疾風ロンド」
たぶん、原作は相当面白いのだろう。プロットの組み立て、ストーリーの展開、繰り返すどんでん返し、そしてラストの処理。ところがその味を全く感覚で理解していない演出と、全員ミスキャストという製作段階のミスで、本当に、いやこれほどまでの出来損ないの映画になるかとういう出来栄えでした。

見せる場所を間違えた脚本も最悪。監督は吉田照幸で、「あまちゃん」を演出した人ですが、映画を作る才能はないのかもしれない。いやおそらくあのドラマは宮藤官九郎の脚本ゆえの成功だったのかもしれませんね。

ある研究所から、究極の炭疽菌が盗まれる。そして、犯人はスキー場にそれを埋め、暖かくなると容器が壊れて菌が広まる仕掛けにし、三億円を要求するのですが、なんとその帰り道、交通事故で犯人は死んでしまう。

そこで、研究所の所長は、極秘でこの炭疽菌を回収するべく研究員の栗林に現地に向かわせる。フィクションなのだからこういう設定もありだと思うが演出と脚本が悪いためか、緊張感が全く見えないし、本当に嘘っぽくなってしまって映画が始まる。

しかも、阿部寛が完全にミスキャストで、コミカルさを出そうとしたのだろうが、全く演出されていないために、盛り上がってこない。柄本明同様、役者任せの画面になっていて、ちぐはぐさ炸裂。

スキー場へ着いたものの、おそらく原作に張り巡らされているのだろう伏線を一つ一つ丁寧に明らかにしてしまい、何の面白みもないほどに、種明かししながらストーリーが流れる。

しかも、そこをしっかり演出するべきなのに、なぜか、ハンディカメラで疾走するスノーボーダースキーヤーの滑走シーンに無駄に必死で演出していて、そこは見せる部分じゃなかろうと思わせる。そもそも、原作の味はここじゃないやろ。全くセンスのなさにうんざりも極みとなる。

しかも、見つけた炭疽菌はすり替えられていて、って、それ最初から見えてるし、その上、さらに別にこれを狙う研究所の女がいかにもで登場するし、最初からまるわかり。そして、まんまと取られたかと思えば、実は栗林の息子がさらにすり替えていてなのだが、このサプライズも全然つまらない。

最後の最後、栗林が記者会見を決めたメモを署長に渡すが、それなんか、終盤で、明かしてるし、何のための伏線なの?という出来栄え。

たぶん原作の東野圭吾は怒っただろうなと思う映画の出来に参ってしまった。