くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「Wの悲劇」「迷宮物語」「悪霊島」

kurawan2016-11-28

「Wの悲劇」
三十数年ぶり、懐かしい一方で、この名作をもう一度見れる角川映画祭に拍手。監督は澤井信一郎である。本当に大好きな映画の一本です。可愛らしさ全盛期の薬師丸ひろ子、女優業全盛期の三田佳子、在りし日の蜷川幸雄、さらに劇中劇の舞台美術が瀬尾河童、今見て、このキャストを見るだけでも楽しくて仕方ない。

原作は夏樹静子の名作ミステリーですが、それを完全に劇中劇の舞台にして、物語はオリジナルに近く、演劇の世界として展開していく。

劇団の研究生で主人公の静香が、その演技のために男と寝て処女を失うシーンに始まる。ゆっくりと夜の部屋を横にパンするカメラにフレームインする調度品のカットが見事なオープニング。

全国ツアーになる「Wの悲劇」の舞台の配役をめぐってオーディション風景から本編に入り、やがて、主演女優がパトロンと寝ているところで腹上死され、それを隠すために、ヒロインに落ちた静香に声がかかる。そして身代わりになり、ヒロイン抜擢され、東京での公演がクライマックスに。

美しい舞台美術に彩られ、名台詞を叫ぶ薬師丸ひろ子が素晴らしい。そして、女優として成功した彼女の前に、役を奪われたライバルが立ちはだかり、全てをマスコミの前で暴露してナイフで迫る。それを体で防ぐ静香の恋人、なんと世良公則だ。

真相が明らかになり、静香は表舞台を追われ、一人アパートを引き払い、最後に恋人の仕事場に行き、女優は続けるので、あなたの元には飛び込めないと笑顔を見せてエンディング。

角川映画らしいグイグイと押して来る娯楽映画の画面作りがとっても華やかで、これが映画だなと思えるほどに清々しい。名作というより、傑作という一本です。個人的にも大好きな映画です。やっぱり今見ても良かったです。


迷宮物語
アニメーションの第一人者、りん・たろう、川尻善昭大友克洋3人が手がけたシュールなアニメ世界のオムニバス作品。どれもこれもも、独創性に優れた作画と展開、鮮やかなオリジナリティが不可思議な世界に誘ってくれます。

「ラビリンス・ラビリントス」はりん・たろう、「走る男」は川尻善昭、「工事中止命令」は大友克洋画面が監督脚本を務めています。

原作は眉村卓で、少女がシュールな世界に迷い込んで行き、やがてたどり着く不可思議なサーカスのようなテントという「ラビリンス・ラビリントス」、ただ過酷なレースに命をかけ、崩壊していく男を描く「走る男」、ロボットが、命令されたままに無駄な工事を続け、その場にやってきた監督員が狂っていく「工事中止命令」

原作はおそらくショートショート的な短編なのでしょうが、独特のアニメーションの世界で、ほとんど音楽のみで描かれると、かなりな映像芸術のごとき世界に変わって行きます。面白い作品であるし、日本のアニメーションの実力を見たという一本でした。


悪霊島
こちらも30年ぶりくらいでしょうか?監督は篠田正浩、ご存知横溝正史原作の金田一耕助シリーズの一本である。

しかし、この辺りになると、篠田正浩監督作品とはいえ、ワンパターンになり、かなりゆるい。宮川一夫のカメラも冴えてないし、シリーズの終焉という一本である。

全体に推理ドラマとしての面白さも、おどろおどろしい伝奇ドラマ的な色合いも薄れてしまって、ドラマ性も弱い。やはりこのシリーズは、最初の二本あたりまでという感じですね。