くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ブルーに生まれついて」

kurawan2016-12-03

「ブルーに生まれついて」
非常に静かな映画でしたが、とってもいい雰囲気がスクリーンから漂ってくる映画でした。何と言っても、主人公のチェット・ベイカーを演じたイーサン・ホークが抜群にいい。これという激しいシーンもないのに、画面のどこかにいつも存在している空気がラストまで途切れませんでした。監督はロバート・バドローです。

ヘロイン中毒で監獄で横たわるチェット・ベイカーが幻想を見る場面から映画が始まる。そこに、映画製作の話が舞い込み、現代の彼が描かれ始める。そして時折、過去の栄光の時代がモノクロームで挿入されるという演出でストーリーが進む。

そして、映画で、妻役を演じたジェーンと恋仲になり、彼女のためにヘロインも断ち、薬のトラブルで、顔を殴られて前歯と頬骨を砕かれた傷害からも立ち直っていく。

やがて、かつての盟友たちも彼の立ち直りを信じ、有名なクラブでの演奏が嫌いマックスとなる。ジェーンが、映画のオーディションでついてこられないのに加えて、プレッシャーからヘロインを楽屋に持ち込む。しかし、いけないという気持ちから心の葛藤を続け、やがてステージの時間が迫る。

駆けつけたジェーンの前でかれは演奏を始めるが、ヘロイン中毒の時の独特の手の動きで顔を撫でる彼を見て、涙を流し、婚約の記念にもらったマウスピースを預けてその場を去ってエンディング。

ミュージシャンの栄光からヤク中での没落、そして再生のお話かと思いましたが、結局、ヘロイン中毒から逃れられなかった結末。物語としては、いつものことですが、実話なのだから仕方ありません。それより、映画としての仕上がりは非常に素晴らしかった。

全編に流れる甘ったるいようなジャズのメロディと、煙るようなクラブの映像、イーサン・ホークの静かな熱演が、グッとこちらに迫ってくる秀作でした。良かったです。