「やさしいにっぽん人」
導入部はとっても綺麗な映像からスタートして、普通に物語が展開するのかとおもうと、みるみるどちらかに偏った思想映画のごとき展開とシュールなカット映像が展開し始める。この前半後半の色分けに終盤眠くなってしまいましたが、なかなかの傑作です。監督は東陽一。
霧がかかる道の彼方から浮かび上がるようにオートバイの軍団が走ってくる。そのあと主人公シャカが乗ったバイクがやってくる。突然警官に止められ、何かと思えば、警官達が自主訓練をしている。なんともバカバカしいオープニング、そしてこのシャカという男の物語が流れて行くが、途中やさしい日本人とはというインタビュー映像が挟まれてくる。
さらに、中盤から、何か闘争シーンが繰り返され、アングラ劇のような映像が繰り返され、どんどん物語がメッセージ色とシュール色が強くなる。
なんとも独特な一本という作り方の作品で、なるほど、監督初期という色合いが濃厚に見られる傑作映画でした。
「日本妖怪伝・サトリ」
人の考えていることが全てわかり、それを言い当てているうちにその人間が考える力をなくすとその人間を食うという妖怪サトリを通じて、現代社会の鎮魂歌のような様相で描いた東陽一監督初期の作品。
ちょっとシュールな空気があるものの、見ていてオリジナリティあふれる演出とサトリを演じた山谷初男の怪演を楽しむことができました。
恋人を失ったあやの前に現れたサトリ。一見普通の人間ですが、冒頭のサトリの解説そのままに片目が潰れている。やがてあやのそばに太郎という奇妙な恋人が現れ、不可思議な物語が展開する。
精神病院や警察のエピソードをちりばめ、ありえない展開も挿入しながらの東陽一の演出はなかなか楽しい。
結局太郎が殺され、サトリももう一つの目を潰され、あやは再び一人になって映画が終わる。やや時代色を感じないわけではないが、個性的な作品としての面白さを堪能できました。