「スウィート17モンスター」
楽しいというか、あまりにみずみずしいほどの青春ストーリーに思わず自分のかつてと同一視してしまう。素敵な青春映画の秀作、そんな一本でした。監督はケリー・フレモン・クレイグです。
テンポのいい音楽に乗って一人の女の子ネイディーンが車から降りるところから映画が始まる。カットが変わると、学校の先生なのだろう、ブルーナーという先生のオフィスで「私は今から自殺する」と話す。
このオープニングがとにかく楽しい。
17歳の彼女はまだ男性の経験もない初心すぎる女の子。子供時代は学校でいじめられて、登校拒否に。なんでもできるイケメンの兄ダリアンにはいつも引け目を感じて、当たるばかり。唯一の親友は幼い頃からのクリスタだけ。
ところが、クリスタがダリアンと恋に落ち、唯一の友達を失ったネイディーンは、右往左往しながらも、ペットショップで出会った青年に、下品そのものの挑発メールを間違って送ってしまう。母親は歯科医とできているようだが、その関係もいかにもドライな描き方と、ネイディーンの機関銃のようなトークに翻弄されて行く流れが素敵。
何かにつけそ相談を持ちかけるブルーナー先生からは、毎回気の利いた返事が帰ってくるのもまたいい。
実はブルーナー先生は素敵な奥さんと子供がいたという終盤のエピソードから、ダリアンとクリスタに迎えに来られるラストシーン、そして、兄と関係したクリスタに絶交状態だったネイディーンも一夜明けて何もかも吹っ切れ、密かに恋心を抱いていた青年の自主制作映画の発表会に行き、恋が何気なく成就するラストまで、とっても爽やかに流れて行くリズム感が最高。
青春映画ってこんな形もありよと言わんばかりのオリジナリティに魅了される一本でした。
「マイビューティフルガーデン」
不思議なファンタジックな空気が漂うイギリス映画の佳作、そんなイメージ満載の映画でした。監督はサイモン・アバウトです。
主人公ベラは異常なほどの几帳面な性格の女の子、そんな描写から映画が始まる。アパートの庭を荒れ放題にしていたことで、役所から一ヶ月以内に綺麗にしないとでて行くようにと言われ困ってしまう。
そこで、料理人のヴァーノンの助けと親しくなりたくない偏屈の隣人老人アルフィーの助けを借りることになるといいうのが本編。
よくある設定の隣人のキャラクターが、いい人に変わるまでがちょっと早い気がするけれど、ベラが密かに恋する青年との物語も絡んできて、とってもファンタジックな展開へ進んでいく。
穴を開けた壁からヴァーノンがアルフィーに料理を届けたり、クローズアップで庭の花を見せたりと、面白いカメラ演出も結構楽しい。
ベラが務める図書館の上司の女が、言葉でなくプレートで書いて小言を言ってきたり、イギリス的な小粋さはなかなかの見どころ。
ラストはベラの恋が成就し、図書館の女が何やらここれまでのことは本の中の話よと言わんばかりに本棚に本を戻してエンディング。なるほど楽しい一本でした。
「汚れなき抱擁」
作品自体は非常にクオリティの高い一本で、構図といい、映像演出といい、ワンランク上のレベル作品という映画でした。ただ、物語が、結婚と愛情という若干一昔前のテーマに近いもので、さすがに時代性を感じざるを得なかった。監督はマウロ・ポロニーニです。
ローマで学生生活をしてきたアントニオは、シチリアの実家に戻ってくる。そこで、バルバラという女性と恋に落ち結婚するが、なぜかバルバラに肉体的な要求をしない。苛立つバルバラの父親の姿を描く一方で、本当に愛する女性には肉体的な欲望が生まれないと語るアントニオ。
物語はアントニオの周りの人々の戸惑いとアントニオの苦悩、さらにバルバラの苦しみが見事な映像表現で描かれて行く。
悶々とする日々を描きながら、ラストは、アントニオが女中を妊娠させ、エンディングとなる。 なぜか周りの人間がアントニオを祝福する様子が描かれ、友達からの電話のシーンで、壁にアントニオが映し出されて行く演出が施される。
街並みの構図の取り方、さりげない鏡の中に映る人物との会話など、テクニカルな演出が多々見られる一本で、なかなかの満足感が得られました。