「三月生れ」
これはとっても良かった。機関銃のように繰り出されるセリフの勢いにまず引き込まれて行くのですが、シンプルな話なのに主人公の心の変化が手に取りように伝わってくる。
さらに、主人公フランチェスカを演じたジャクリーヌ・ササールという女優さんがとってもキュートで可愛いから、のめりこんでしまいました。監督はアントニオ・ピエトランジェリです。
フランチェスカが男友達と遊び呆けているシーンから映画が始まる。恋人のようで恋人未満のような青年と楽しむ彼女の姿は、とにかく初々しい。
友人たちと騒いで、一人深夜の電車に乗って帰る道、20歳ほど年の離れた建築家サンドロと出会う。
やがて二人は愛し合い、結婚をするが、最初は幸せ風な二人だったが、間も無く結婚生活の難しさを知ることになる。
仕事にかまけてなかなかの家庭にいつかないサンドロの姿に、寂しさを隠せなくなるフランチェスカは、なんとか夫の気持ちを引くために、かつての男友達と遊んだり、夫の注意を引くために嘘をついたりするようになる。そして喧嘩も頻繁になり、別れというものが身近になってくる。
しかし、そんな溝ができたにもかかわらず、フランチェスカの心は常にサンドロに向いていた。
クライマックス、とにかく別居しようとサンドロに言われ、一人列車に乗るフランチェスカだったが、彼女の後を必死で追いかけてくるサンドロを見て、列車を止め、飛び降りてサンドロに抱きつくフランチェスカのシーンでエンディング。
このラストシーンの畳み掛けのうまさ、それまでの言い争いの盛り上げのうまさに思わず画面に釘付けになる。素朴な話なのに、どんどんスクリーンの中の世界に引き込まれてしまいました。なかなかの秀作です。
「3月のライオン」後編
前編よりはドラマ性がしっかり描けていてまぁまぁ見ることができたが、前半はやはり前編のグダグダを引きずった感じでした。ただ、中盤から次第に将棋の話よりも家族の絆の話に展開して行くと、それなりに、登場人物が生き物に見え始めてきたので、しっかり画面を見ることができました。監督は大友啓史です。
後編の中心は後藤の妻の死、桐山がお世話になっている家族の娘のいじめの問題から、出ていった父親の帰還などが絡んできて、ほとんど将棋のドラマは脇に追いやられた感じです
ただ、それらの脇の話に引きづられて桐山たちの心の葛藤が前面に出てくると、やはり、大友啓史の演出力が見えてきたという感じでしょうか。見応えのある展開になっていた気がします
ただ、時すでに遅く、終盤がくどくなってしまってしんどかったのも事実。有村架純のキャラクターが最後まで生きなかったのも残念。前後編にして完全な失敗作という映画でした。