くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「エゴール・ブルイチョフ」「光と影のバラード」「絆」

kurawan2017-06-01

「エゴール・ブルイチョフ」
ロシア革命の時期を背景に、末期の癌にかかった主人公の周りの人々の反応を描いて、当時のロシアの退廃した様子を描いた作品ですが、全体が混沌としていて、いかにもロシア映画という感じの一本。個性は十分感じますが、しんどかったです。監督はセルゲイ・ソロヴィヨフです。

時は1916年、第一次大戦の真っ只中で、そのドキュメント映像を流しながら三部に別れた物語が描かれます。

主人公のエゴール・ブルイチョフが癌を宣告され、余命僅かとなったところから物語が始まり、彼の周囲の人物が彼の遺産を巡った話をする。さらに、訳のわからない治療師がやってきてはばかばかしいほどの提案をして金を要求する。

いかにもロシア映画的なばかばかしいような展開と、一方でシリアスすぎるセリフも散りばめられ、混沌としてくる中に、没落間近の貴族たちの狂った姿を描いて行くという流れである。

部屋の区画をスプリットのように配置した映像表現や奥の深い構図なども多様し、平凡な画面作りを避けているのはさすがにクオリティはそこそこといえるが、この手のロシア映画は苦手なので、素直にしんどかったです。


光と影のバラード
ニキータ・ミハルコフ監督の長編処女作品。95分の作品だが非常に長く感じたのは、物語の展開が二転三転するう上に極端なジャンプカットが多い。さらに、突然挿入されるシュールな映像の数々に時折奔走されたからかもしれない。しかし、画面作りの美しさといい、切り替えの斬新さといいまだまだ若々しいエネルギーを感じさせる一本で、のちの彼の手腕を垣間見せるなかなかの一本でした。

モスクワからの要請で列車に大量の金貨を乗せて移送する計画が持ち上がるところから映画が始まる。

当然予想される強奪に備え、情報も一部の人間にし、厳重な計画で移送が始まるが、途中で強盗団に襲われてしまう。

なぜ情報が漏れたのか、どうやって取り返すか等々の丁々発止の展開が次々と繰り返され、最後はなんとか取り戻した?というような感動的なラストシーンを迎える。

オープニング、戦争が終わって嬉々として歌い踊る男のシーンで始まるこの作品は、随所に一見無関係と呼べるような映像鵜が繰り返される。このオープニングから本編への流れもかなり唐突である。

ラストシーンも、再会のシーンに合わせて冒頭の喜びのシーンが被ったり、クラシックな車が坂を駆け下りたりとなかなかの技巧的な演出が施されている。

しかし、画面の構図などは実にしっかりとしていて美しいし、見せるべきところはかなりのクオリティで完成されているのはさすがである。

まだまだ監督の若さが見られるみずみずしさの残った作品ですが、それなりに面白かったです。


「絆」
イタリア映画のように慌ただしい騒がしい映画、しかも落とし所へまっしぐらではなく、はぐらかしの連続で展開するので、長く感じてしまう。確かにユニークな作り方で個性的な作品ですが、好みのタイプの映画ではないですね。監督はニキータ・ミハルコフです。

主人公のマリアがたくさんの荷物をかけて列車に乗ろうとするが切符がないと断られるところから映画が始まる。通りかかった気のいい男にうまく切符の買い方を教えてもらいとりあえず汽車に乗る。さっきのおじさんと列車の中で意気投合し、ついたのは娘のニーナが住む都会の街。

マリアはニーナと会い、夫と別れて孫と暮らすニーナの家へ。ひたすら機関銃のような会話が続く。夫と別れた娘のことや、甲斐性のない元夫、自分の夫のもとを訪ねたりしながら、ひたすら喚き散らすマリアが正直鬱陶しい。この騒がしさがラストのしんみりな感動につながるのかと思いきや、ラストも今一つ観客を無視したような展開からエンディング。

確かに、いたるところに細やかで独創的な演出が見られるので並の映画ではないのはわかるが、どうにも好みの作品になりきらなかった。