くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「望郷」「ポルト」「いつも心はジャイアント」

kurawan2017-10-02

「望郷」(菊地健雄監督作品)
とにかく、陰に陰に沈んで行く映画でした。見ていて、イライラしてくる作品だった。湊かなえ原作なので、どこかにミステリーが存在するかと思ったが、「夢の国」「光の航路」という二部仕立てというだけの映画でした、参った。監督は菊地健雄

一人の女性夢都子が、とある島の実家に戻ってくるところから映画が始まる。彼女はこの島の旧家の娘で、祖母は何かにつけて家を守ること、贅沢をやめることを執拗に迫ってきて、母も束縛されている。いつかこの島を出たいという思いが日に日につのる姿を描いて行く。

とにかく、イライラしてくる話で、母親は執拗に姑に媚びるし、従う。さらに娘にも強要してきて、やがて大人になった夢都子は教師になり、ある夜家に帰ると祖母が苦しんでいて、それを見殺しにする。近くにある夢の国ドリームランドをモチーフにしたストーリー展開である。

切り替わると、先ほどの話で相手役になる男性教師航の物語。いじめにあった教え子を助けることで、かつての父親との確執を思い出す。ちょっとしたことで、お互いに溝ができたまま、父親は癌で死んでしまった小学生時代。その後悔をひきづって、やがて見えてくる真実に光を見出し、助けた教え子に希望を与えて物語は終わる。

時は現代に移り、この島で石仏に掘られた十字架を探しに行ったところで二人は再会、それぞれの人生を振り返りながら物語は終わって行く。とにかく全体に暗いし、絵作りも普通なので、ローカル映画とはいえ、見るべきところがしんどい映画でした。


ポルト
絵作りがとっても美しい作品で、小品ながら、映画としての面白さは楽しむことができましたが、と言って、オススメするほどの作品ではなかったです。監督はゲイブ・クリンガーという人です。

主人公ジェイクとマティがベッドの上で向き合っているカットから映画が始まる。どうやら二人は出会った途端にお互いに惹かれ、そのまま一夜を共にしたようである。それぞれ一人の物語の時は画面がスタンダードになる。二人が出会うバーのネオンのバックの画面や、街並みの捉え方など、なかなか美しい。こういうヨーロッパ風の絵作りというのは引き込まれます。

物語はジェイクの側から、マティの側から、そして二人の物語へと三部構成で描いて行く。マティには恋人がいて、時間軸が一旦先へ進み、マティとジェイクが別れてしまう下りが中盤で描かれ、遡って二人が出会って、冒頭のベッドのシーンで映画が終わる。

シンプルな映画ですが、ちょっと次の作品が楽しみになる作り方が魅力の一本でした。


「いつも心はジャイアント」
北欧映画ですが、ファンタジーなのか差別啓発映画なのか、スポーツ感動映画なのかつかみどころがない。全体にイメージとしての作品作りと捉えればそれはそれでいいと思うのですが、妙なリアリティもあったりするとはぐらかされてしまう。不思議な一本ですね。監督はヨハネス・リホルム。

生まれながらに頭が奇形で、先天性の病気であるリカルドはペタンクというスポーツにその希望を託している。というのは、彼を産んだ母親は精神障害でリカルドと別に暮らしていた。
リカルドはペタンクで優勝してそのトロフィを母親に届け続けており、それがいずれ母親との再会になると信じていた。そしてその妄想は彼を巨人に仕立て上げていた。時折、巨人の視線で大地を見下ろしながら、ペタンクの競技を続ける彼の姿が描かれて行く

物語はふとしたことで怪我をしたリカルドは一旦チームを外されるが、彼を信じる友人とチームを組んで、そのまま北欧大会に出場。ところがちょっとしたハプニングで救急車で搬送されることになり、その車で死んでしまうが、一方の母親もベランダから飛び降りた程で二人は巨人の手の上で再会し幸せになって終わる。

まさにおとぎ話といえばそれまでだが、物語が強引すぎるのと、適当すぎるのがどうも良くない。映像だけを楽しんで、素直に見るべきなのだろうが、なぜ奇形の主人公を仕立てるのかという無理矢理感から抜け出せないままだった。