「お琴と佐助」
何度も映画化された谷崎潤一郎の春琴抄の映画化である。山本富士子のスター映画なので、それはそれで十分楽しめる一本でした。監督は衣笠貞之助ですが、映画としての出来栄えは普通というレベルだったかと思います。
物語は今更なので書きませんが、終始目を閉じたままで演じる山本富士子と、佐助を演じる本郷功次郎の姿は、まさに豪華版という感じです。
ただ、カメラアングルにしても、ワーキングにしても、かつて見た名作「春琴物語」に比べれば少し落ちるのは事実です。
でもこの物語自体、好きな一編なので、何度見てものめりこんでしまいますね。
「山猫令嬢」
戦後間も無く作られた母もの作品の原点ともいうべき一本で、かなり強引なストーリー展開ですが、きっちりと作られている映画らしい作品でした。監督は森一生です。
田舎に住む主人公の少女のところに大陸から母親がもどってくるところから映画が始まる。
いかにも水商売をしてきた風の母親に戸惑う主人公と、平穏で上品な生活を望む主人公の前に、やや下品なほどに振る舞いながらも必死で生活して行こうと知る母親を最初は恥じてしまう。
しかも、京都へ引っ越して通い始めた学校の担任の男性教師が父親というクライマックスがすごく強引ながら、結局、母親ともうまくまとまり、感動のラストへ向かう。
時代を考えればいくらでも当時はあった話かもしれず、一方で思春期の少女の危うい心も描いた点では非常に奥深い脚本になっているのは、ちょっとしたものである。
傑作とまでいかなくても、ちょっとした佳作という映画だったように思います。
「ジオストーム」
スペクタクルデザスター映画ですが、小気味好いストーリー展開とスピーディな演出で面白かったです。もちろん、特撮大作なので細かい人間ドラマの部分はあっさり流していますが、程よいサスペンスとドキドキハラハラを楽しむことができました。監督はディーン・デブリンです。
世界中に異常気象が続き、危険を感じた人類は地球全体の気象をコントロールできる宇宙ステーションと衛星システムを構築する。物語はその立案責任者ジェイクが解任されるところから始まる。
言いたい放題ばかりでトラブルの多いジェイクの後に弟のマックスが着任、そして三年が経ち、システムは間も無く世界所有に移行されようとしていた。ところがここにきて次々と不具合が発生。世界各地で事故が起こり始める。
早速、アメリカ政府はかつての立案者ジェイクをステーションに送り込む。そして地球上に待機するマックスと協力し、陰謀の真相を暴いていくのが本編。どちらかというとスペクタクルよりサスペンスに重きを置いた展開が映画を面白くした感じです。
結局、次期大統領を狙う大統領の側近が犯人と判明し、暴走した衛星を再起動させるためにジェイクが自爆せんとするステーションに残り、無事任務を果たし、奇跡的に助かってハッピーエンド。
わかりやすさとスペクタクルシーンのみに頼らなかった制作スタイルが成功したという感じの映画でした。