くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ありふれた悪事」「8年越しの花嫁 奇跡の実話」

kurawan2017-12-19

ありふれた悪事
モスクワ映画祭の最優秀アジア映画賞受賞ということで見に行ったが、なるほど韓国の暗部に迫った作品という意味で、なかなか見ごたえのある内容でした。監督はキム・ボンハン

気の良いいかにもな主人公の刑事カン・ソンジンは国家安全企画部室長から呼び出され、ある連続殺人事件の裏付け捜査を依頼される。しかし、その捕まえた犯人は完全な冤罪で、捏造するための裏付け捜査だった。いかにも新人という若い刑事を相棒にして、犯人を捕まえるコミカルなシーンから映画が始まり、また韓国映画の稚拙さが目立つなと見ていたが、中盤から後半、どんどん物語が暗部に迫ってくる。

時は1987年、韓国に軍事独裁政権が成立し、世の中は弾圧とカネとコネのドロドロした時代だった。カン刑事の兄は自由日報という告発新聞の敏腕記者で、捏造の事実や国家安全企画部の悪行を摘発する証拠を集めていた。

やがて、カン刑事にも圧力がかかってくるし、兄も捕まって拷問にかけられていく。なんとか光が見えたかに見えるとまた圧力で踏みにじられる展開が続き、結局カン刑事も逮捕され、兄は殺され、妻も殺される。しかし、不満が爆発した市民たちは立ち上がる。

そして30年後、カン刑事の裁判の場面で、彼がついに無罪と宣告されて映画が終わる。

韓国の歴史の暗部を真面目に描いた後半部がなかなか見ごたえがあるが、ややくどいししつこいのも確か。しかしこれが韓国映画の個性なのだとおもいます。


8年越しの花嫁 奇跡の実話
先日見たクロエ・グレース・モレッツの「彼女が目覚めるその日まで」と同じ病気を扱ったように思うのですが、素人なので映画の中だけのセリフからの理解です。

こちらも実話で、突然の難病になった恋人を8年間思い続けた青年が投稿したYouTubeの動画を元にした作品。本当に命って素晴らしいなと思います。映画としての出来不出来以前に生きることの素晴らしさに最近感動するようになりました。監督は瀬々敬久

車好きの主人公尚志は職場の同僚の誘いで行きたくもない合コンに参加、そこで一人の女性麻衣と出会います。

お互い惹かれあった二人はどんどん親しくなり婚約するところまで行きますが、突然麻衣は原因不明の病気で昏睡状態に陥ります。体内の抗体が脳を攻撃しているということらしく、先日のクロエ・グレース・モレッツの作品と同じかと。

尚志は毎朝仕事の前に病院を訪れ、麻衣が目覚めるのを待ち、数年後意識が戻りますが記憶障害でほとんどのことを忘れていた。しかも尚志のことは完全に近く記憶になかった。それでも尚志は麻衣を支え続けますが、かえって麻衣を苦しめるように思った尚志は麻衣から離れていく。

しかし、ふとしたことで、何年もの間尚志から送られていた動画を見直した麻衣はもう一度尚志を訪ね、もう一度好きになったからと告げる。あとは結婚式のシーンをクライマックスにして映画は終わります。

岡田惠和の脚本らしい話の組み立てと構成になっていて、素直に感動していきますし、瀬々敬久監督の誠実な演出も映画を良質な難病ものに仕上げているのが好感。嫌味のない主演の二人の演技も良かった。こういう作品は、映像としてのあれこれいうものではないと思います。この映画を見て生きる勇気をもらって貰えば良いのだと思う。そういう作品でした。